スタバ

スターバックスコーヒーのアートプロジェクト at 銀座

「人々の心を豊かで活力のあるものにするためにーひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」を企業ミッションとするスタバが、創業(1996年)地の銀座で「いま、アーティストはどうあるべきか?いま企業はどうあるべきか?」を掲げて、アーティスト北澤潤さんと組み、アートプロジェクト「FIVE LEGS Project」に取り組んだ。そのプロジェクト最終日3月20日に銀座マロニエ店2階で開催されたトークイベントに参加した。

全国のスタバの店長から選ばれた16人のアイデアワークショップが開かれたのが2月。北澤潤さんが出したお題は、「東京のど真ん中で新しい屋台を試作する」。5人のアイデアが選抜され、5つの機能をもったスターバックスコーヒーの屋台が「デッドストック工務店」の協力で出来あがった。2018年3月16日から20日の5日間、アイデアを出した店長が屋台の店主になって銀座の町を、決められた3箇所に停留しながら周回。「屋台だけど、スタバってどういう事?!」といって面白がって立ち寄ってくれた人たちと交流した。

店長は身一つで3箇所でしゃべり続ける。店長たちのアイデアは、「立ち寄ってくれた人に、コーヒーのスリーブにメッセージを書いてもらい、お客様同士で交換する」「このチームの名前を決める」「銀座の思い出を記録し地図をつくる」「UFOキャッチャー」「かみしばいシアター『いちかちゃんとママのお話』(いちかちゃんは店長の娘さんです。)」。偶然隣りに座った人たちの間に暖かいコミュニティが一瞬立ち上がる本物の屋台となった。

北澤潤さんは、日本とジャカルタを行き来しながら「東京育ちの私の感覚を揺さぶ」られてきた。私たちは「見えない何かに囚われていないか?」「社会的個人という窮屈な枠をはめているのでは」と感じてきた。この囚われと問いかけを乗り越えることができないだろうか。これが、アートプロジェクトの投げかけである。

ジャカルタの屋台はカキリマ(KAKI LIMA)と呼ばれている。直訳すると5つの脚。2つの車輪、ストッパー、そして人間の2本の脚だ。北澤潤さんは、このカキリマを『ひとりの人が、自分にできること、身の回りにある材料を組み合わせ、即興的に身一つで社会に関与する「最小のプロジェクト」』『自らに社会を適合させてしまう「逆転のふるまい」』と表現した。スターバックスのマークがついたカキリマによって、私たちが囚われている何かを、乗り越えられたのだろうか。

まずは、実行に移すだけでも乗り越えなければならないものがある。警察から屋台の停留場所について了解をいただき、保健所はコーヒーを入れて出すことはNG(お客さんにお湯を注いでもらえば貰えばOK)、銀座商店街からは「やりたかったことだから、絶対に失敗しないでほしい。」といわれたことなど、ジャカルタと違ってそう簡単ではなかったらしい。

スタバの店長たちは、屋台を引きながら、無防備に身一つで銀座の町と向き合った。そして屋台という特殊装置で、「スタバの店長」という社会的な個人から、○○さん、○○ちゃんのお母さん、というようにチョット枠を超えてみせた。それによって、屋台に立ち寄った人たちもまた、囚われている何かをチョット解放した。スタバの店内とは違った心の交流が、屋台に集まった人たち同士、そして店長との間で生まれた。一杯のコーヒーで屋台とか横丁の店主や女将になれる。スタバとお店に寄ってくれる人たちを、もっと近づけるヒントがあったのではないか。



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