チムポムワタリウム_

「たどり着けないもどかしさ」をキュレーションするワタリウム美術館

ワタリウム美術館の2階は、普通は吹き抜けの大きな壁一面をつかった展示空間である。しかし2階にはいると、別の時空に抜けるトンネルがあり、それを通ると、この展示のために組まれた木製の階段と4mぐらい上のデッキが目の前に現れる。どのような展示なのだろうか?その階段を上がっていって「あっ」と思った。

3階の展示を、展示室の外側から、仮設デッキで、ガラス越しに見る仕掛けになっている。作品に近寄れないだけでなく、音声ガイドで、作品そのものではなく、その映像をみるという幾重にも「たどり着けないもどかしさ」をキュレーションしている。

この展示は、ChimPomによって発案されたもので、福島の帰宅困難区域内で展示している作品を、サテライト展示するという仕掛けだ、とわかって納得する。決して行くことができない、帰宅困難区域内で開催されている展覧会の名前は「Don`t Follow the Wind」。そしてサテライト展であるこの展示は「Don`t Follow the Wind—Non-Visitor Center」である。(2015年10月18日まで)

2階では、双葉町で育った地元の方が案内人となって、決して行くことができない展覧会のチケットを売っている。このチケットが、唯一手に取れる作品である。長手が17〜18㎝の銀色のもので、期間は20××年までとなっている。

このチケットを手に取ると、ある一点だった自分の中の時間が、被災地のリアルな時間・・2011年3月11日と帰宅困難区域が解除されと時までの何十年間かに引き延ばされた。このチケットの値段が高いか、安いかはその人次第だ。

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