障害のある方のための特別鑑賞会

未来の美術館

東京都美術館のある日。展覧会休館日を利用して障害者のある方のための特別鑑賞会が開催された。参加者は1000人余。55パーセントは障害がある方、45パーセントが介助者という構成。
 いつもの展覧会より和やかなコミュニケーションがあちこちで立ち、これは、30年後の日本の風景だと思った。ゆったりとした鑑賞。介助者が目の不自由な人に、作品から感じた何かを伝えようとする声、ストレッチャーに寝たままの人が作品の見える位置に移動する会話、楽しげな声、解説を読む声、etc.で美術館があふれていた。

 見えることを前提に用意された説明だけでは、目が見えない人には伝わらない。介助者が作品と向かい合い、どう感じたかを会話し、2人の「そうだね!」が重なり合って伝わっていく。この鑑賞会は、健常な介助者にとっても、より深い体験をもたらしている。

アートの前では、展覧会の学芸員の感性も、私が感じた何かも、障害を持つ人が感じ取ったことも、もちろん子どもが感じたことも、言葉にする技術に差があっても、どちらかが上等ということがない。知識や社会的な関係性によるヒエラルキーはあいまいになり、障害を持つ人は、私たちにとって、ケアをする対象ではなく、一緒に楽しむパートナー、違う感性を持つ友達となる。新しい体験を共有するパートナーとなる可能性を、この特別鑑賞会は提示している。


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