洋杉戸

杉戸洋 とんぼ と のりしろ の楽しみ方

東京都美術館(~10月9日)で開催中の杉戸洋展を、高三のA君とまわる機会があった。ギャラリーA・B・Cをいっぱいに使った展覧会。いつもの下りエスカレーターの両側にピンクのポリカボネードが立てられ、振り返るとエスカレーターの踏み面の黄色い光が動きながら反射してとてもきれいだ。

ギャラリーCは壁は真っ白に塗られ、ところどころに段ボールでテレビの画面ようなものが取り付けられている。床と壁が交わる隅全体に15㎝角の出っ張りを設え、その上に段ボールは板切れなどを組み合わせた作品が並べられている。A君は「道路を歩いているみたい。」「白い壁の向こうに別の空間なあるよう。」と表現した。

私たちは、レンガで舗装された公園の散策路にいるように思え、テレビの画面のようだったものは、向こうの空間への窓のように見えてくる。

ギャラリーAまで下りてくると、展示室の吹き抜け空間を一番感じられる。いつもは主張しない壁やガラス窓を虹色に設えてあり、この空間全体が作品であることがわかる。A君は「下から見上げた方が、上からのぞき込むより広いね。」とつぶやいた。壁に掛けられたタイトルや説明のない絵画も、常滑のタイルでつくられた文化の地層のような壁面も時間と空間を拡張している。

「とんぼとのりしろ」は製本すると隠れてしまう余白みたいなところ。建築家前川國男がつくった空間から、杉戸洋が着想した作品と空間は、鑑賞者が作品の見えていないところまで想像力を拡張し、自由になっていけるように思えた。

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