ワタリウム美術館、石川直樹+奈良美智で自分の地図を塗りかえる道行き

2015年5月4日

ポップアート作家奈良美智と写真家石川直樹が、青森、北海道、夏のサハリンまで次第に足を伸ばし、「かつて自分が立っていた場所さえも全く違って見えた。」という、石川の言葉が示す旅の写真と道行き「to the north,form here」が、外苑前ワタリウム美術館で展示されている。

奈良も「今まで自分がいた場所からどれだけ動くことができたのか。確実にわかることはひとつ、そこより北へ向かって思考し始めたこと。」と、感覚を共有しての旅だったことが示されている。2人が体感してきたことと観る側の体感とのあまりの落差を埋めることはできそうにないが、2人が撮った写真のスライドショーを4階エレベーターホールで2クールぐらいみると、その差が微妙に縮まる気がした。

サハリンの6才、9才ぐらいの女の子が、シャッターを押す奈良と対峙し、正面から写っている写真がある。奈良が描く女の子は「まさにここにいた。」そして「こちらに対峙しているのだ。」という発見があった。こちらを正面から見据えている奈良の絵を観にいきたい思った。

同じシーンをとっても石川の写真は、それがなぜオモシロイのか、その背景まで写っていると感じた。写真家が瞬間に切り取る今とここの真実と、対象に正面から向かい合う奈良との違いを発見するのも、この展覧会の面白みかもしれない。

道行きで読むために持っていった本や聴いた音楽なども展示されている。普通に建物などを撮ったら全てウソくさくなってしまうサハリンの、何もないこの大地を撮るのはこれからであり、この展示は作品になる前の道行きである、と語っているような気がしてならなかった。

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