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あなたに捧げる「未来語りダイアローグ」

大きな失敗をして、圧し潰されそうになっている友人を何とか支援したい、と思っていたら、妻が「未来語りダイアローグ」が面白かった、この本にでてる、といって紹介してくれたのが「開かれた対話と未来―この瞬間に他者を思いやる」(医学書院、ヤーコ・セイックラ+トム・アーンキル著、斉藤環監訳)である。望ましい未来とそこに至るまでの道のりを、当事者と支援者の対話を通して言葉化し、その未来に向かって実際に踏み出すことを目的としたこの対話方式を、7点にまとめてみた。

【1】問題を抱えているその人(当事者)のことを一番心配している人(支援者)が「自分の心配事を話したい」といってみんなに召集をかける。会のスタートは「自分の悩みの解決のために集まってくれた参加者に感謝する」ことから始まる。自分事として招集することが大切。そして問題を抱えた当事者が立ち会ってほしいと思う人々だけを招くこと。
【2】参加者の言葉を軸にすべてが展開していく。
【3】誰からも責められない、責めない、過去の失敗に触れない。
【4】対話は、当事者、支援者という枠組みをはずし、同じテーブルの上に載って、こどもを含む参加者全員に話したり聞いたりする機会をつくる。いつもとは違う、そしてインスピレーションを大事にする対話のために!そのため、当事者の問題そのものに関わらない中立的なファシリテーターをおく。フリップチャート(大きな紙に板書しながら、順次つるしていく)を担当するファシリテーターがペアになる。
【5】望ましい未来を語ることから始めて、現在に向かって振り返る(思い出す)形ですすめる。ファシリテーターは、まず「一年経って、状況はすっかりよくなりました。どんな感じですか、〇〇さん?何が一番よかったのでしょうか」という質問で、みんなを一気に一年後の未来に連れていく。まるでタイムマシンのように。そして「そういう変化を起こすために、あなた自身はどんなことをしましたか?誰がどんなふうに助けてくれましたか」という質問で、未来からゆっくりと時間を巻き戻していく。
【6】参加者は「・・・することができました。」「・・・を利用しています。」「・・・の助けで何とかのり切りました。」「・・・に参加しました。」というように、未来に自らを置き、現在に向けて振り返り、未来のプラスイメージを言葉にする。自分の発意で言葉にすることで、気持ちが前向きになる。
【7】未来から振り返って「一年前の今日の次の日に、さっそく○○しました」というように提案のキャッチボールがおき、まわりの同意とストーリーが生れながら進む。最後にフリップチャートを見ながらダイアローグの提案者が清書して参加者に配布する。再会の日を決める。

■「未来語りダイアローグ」は、ファシリテーターが、どの順番で誰に何を聞いていくのか、が重要なポイントだ。この本の事例に従って改めてまとめておきたい。
(1)当事者を一年後の未来に連れていく質問から始める。
◇一年経って、状況はすっかりよくなりました。どんな感じですか、〇〇さん?何が一番よかったのでしょうか?◇そういう変化を起こすために、あなた自身はどんなことをしましたか?誰がどんなふうに助けてくれましたか
(2)当事者の未来語りを受けて、立ち会ってくれた親友に対し以下のように質問する。
◇この一年どんなふうでしたか、特にどんなことがうれしかったですか?◇あなたの立場から何をしてあげたのですか、だれがどんなふうに助けましたか?
(3)親友の未来語りで勇気を得た当事者に対し、さらに心の奥にある核心に触れる質問をする。
◇あなたは『一年前』にどんなことが心配でしたか?安心させてくれたのは何ですか?◇『一年経過したころ』で、何があなたの心配を軽減させましたか?」
(4)支援者に、どのように支援し、そしていい結果を得たかを「思い出して」もらう。
◇あなたの状況はどうか、どんなときに特にうれしいと感じるか。◇あなたは何をしたか、誰がどんなふうにあなたを助けてくれたか◇一年前どんな心配をしていたか、その心配をやわらげてくれたのは何か

バックキャスティングという言葉がある。ありたい姿、あるべき姿から「いま」を考える思考法、と解説されるが、困難の内にある時「あの時、あんなことがあったけど、そこで発想や行動を転換したから今がある。」と思えるような生き方、と理解している。「未来語りダイアローグ」一人版といってもいいかもしれない。
大失敗した友達には、まずはバックキャスティング思考法を進め、そして1年後の未来からみて、今の日々の生き方を一緒に検証する「未来語りダイアローグ」二人版を試してみたい。

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