大友良英

ワタリウム美術館ライブ大友良英withパイク

アーティスト同士が強烈なパワーをぶつけ合うコラボに立ち会い、より深くそれぞれのアーティストを知る、という体験をした。

すでに他界しているビデオアーティスト、ナムジュン・パイクの ワタリウム美術館の所蔵展での大友良英のライブ演奏。照明は薄暗く落とされている。ゲート状に積み上げられ、ハイスピードで明滅している初期のスピーカー付きブラウン管テレビの前で演奏を始める。真上を延々と貨物列車がすれ違うガード下にいるような大音響とジェットコースターのようなスピード感が、パイクのビデオ映像に呼応し始める。まるでこの音楽のためにパイクがつくった映像という様に、2台のレコード盤とシンセサイザーのノイズと併走し、薄闇の大友良英と一体化してくる。「いつもの自分とは違うことをしたいと思っています。」という大友のはじめの言葉は、パイクを身体化し放出しようとするその直前のアーティスト自身を表現したものだった。

頭の芯、そして身体の芯まで到達する逃げられない音響、電子ギター、ドラの響きとビデオアートで、異次元に連れて行かれた。約55分の演奏が終わると静かに明滅するビデオアートに戻ったが、パイクの映像は引き出す人がいれば計り知れないパワーを放出することを実感し、大友がパイクを身体化する器をもち、それによっていつもとは違うステージに自らを載せられるアーティストであることも示された。

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