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自然の色。

ベンガラ染め、というものを体験してきた。

ベンガラというのは古くから使われてきた顔料で、大昔でいえば土器に塗っていたり、少し前の時代までは防虫・防腐剤として木の板に塗られ、日本の木造建築を縁の下で支えてきた。赤鉄鉱という赤い岩が原料で、その岩を砕いたり、なんだりしまくってようやくできるのがベンガラというものなのだという(Wikipediaで調べてみたがすっごい大変そうだった)。防腐・防虫剤としての機能を買われ、古くから使われてきたベンガラだけれど、日本の建築の様式などが時代と共に変化していき、現在ではベンガラを使用することはほとんどなくなってしまったのだという。
今日大阪からわざわざ青森まで来てワークショップを開いてくださった小渕ユタカさんは、もともとベンガラ塗りの職人で、そういう時代の移り変わりを自分の目でみてきた人。もともとは赤い色がメインのベンガラを、高温で熱することによって色を変化させたり、色と色を調合したりすることによって、今までのベンガラにはない新しい色を生み出してきた。

黄色い土。これは地表から300mも深いところで採取された土。
温度を高くするとどうなるか?という実験。
熱すると段々赤くなる。
乳鉢に取り出しぐるぐる混ぜるとこんな感じの鮮やかな色が生まれる。

ベンガラは天然素材だ。天然素材であるということは、つまり土に還るということ。ホームセンターなどで市販されている科学の力で作られたペンキたちが悪いわけではないと思っているけれど、土に還ってくれるというだけで心理的にかなり安心して使うことができる。
ペンキが危ないものだ、と思っている理由は匂いにあると思っている。ペンキの匂いを想像するとクラッとするようなシンナーの薬品臭を思い出す。これがなんとなーくペンキを避けている要因で、明らかに何らかの害がある匂いだ、と身体が反応しているんだろうと思う。使うこともあるけれど、必要に迫られない限り使いたくない。
それと比較してこのベンガラは、顔を近づけて匂いを嗅ぐと、畑の中にいるような土の香りがする。もともとが岩なので当たり前っちゃ当たり前なのだけど、なんだかものすごく不思議な気持ちになる。昔の人からすればこっちが当たり前なのだろうけど、科学に慣れきってしまった自分にはものすごく新鮮で最も新しいものにも思えてくるのだ。僕は自分の採ってきたアケビの蔓をベンガラで塗ってみたいと思いこのワークショップに参加したのだけど、この匂いを嗅いで、これなら塗っても全然問題ないなと心から思えた。

このワークショップでは、まずユタカさんが持ってきてくれたいろんなベンガラを使って、自分の色を作ってみようぜ、というところからスタートした。乳鉢を使って、各々色を混ぜながら自分だけの色を作っていく。僕は自分のアケビ籠を縄文土器のような色合いにしたかったので鈍い赤色を作ろうとしていた。

藍色、オレンジ、黄色、黒、白、茶色、赤、などいろんなベンガラ
自分は赤と黒をメインに混ぜてこんな感じの色を作った。
他の参加者が作った色たち。

色を混ぜ合わせながら、乳棒で粒子を細かくする。細かくしないと木に色が乗らないのだそう。大体細かくなったなというところでお湯を入れて溶かしていく。ここでもまた乳棒を使ってお湯に粒子を溶かしていく。混ぜていくと独特のツヤととろみが出てくる。お湯の量を調整しながら色の濃淡を調節する。粒子が完全にお湯に溶ければ完成。ぱっと見自然のものとは思えないくらいのカラフルな色が完成した。でもやっぱり蛍光色というよりはどこか土の感じが残っている色というか質感を感じますよね。

お湯を入れて粒子を溶かす。
最初はこんな感じ。
ぶつぶつしたところを潰しながら混ぜていく。
するとこんな感じで艶のあるなめらかな感じに。

それらを使って色塗りタイム。それぞれ持ってきた木や器に色を塗る。ただただたのしかった。最後にミョウバン液を塗ることによって、色を固着させる。これにて完成。次のワークショップの人たちがきていたけれど、僕は居残って色を塗らせてもらっていた。

棍棒を作ろうと思って削っていた木に色をつけてみる
アケビの籠に色をつけてみる
アケビの作品に色をつけてみる

色をつけると、今までにない個性みたいなものがそのものたちに生まれてくるような気がしてくる。今回は出来上がったものに塗ったのでちょっと塗りづらいところもあったのだけど、次はアケビの蔓に着色してから編み込んでみるのもいいかもしれないと思った。色がつけられるとなると、またやりたいことの幅も広がってくる。自然のものがそもそも持っている個性を殺さない形で、ベンガラとうまく組み合わせることができれば、おもしろいものができそうだな、と思った。

毎月おもしろいイベントを企画してくれるサブロク家さんにはまじで感謝しかない。片道3時間ちょっとかかるので遠いんだけども、今のところ毎回行ってよかった(むしろ、これ行っておけばよかった・・・と後悔してるものもある)と心から思えるのでほんとめっちゃすごいなあと思う。ユタカさんは大阪が本拠地ということで、またいつか大阪に行った時に会えたら嬉しいなあと思ってます。ありがとうございました。

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