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柔軟剤の匂い

キーをたたく距離に手を置いても纏わってくる花の匂いで泣きそうになる。

つい5分前のことを書こうと思います。
それと初投稿がこれになってしまったのが少し悔しいです。今日はいいことがたくさんあったのに。

私、大学の寮に住んでいるんです。
当然、洗濯機や乾燥機なんかは共同で300人程度の寮生の服を、30台くらいのそれできれいにするんです。

例にもれず、私も出かける前に洗濯物を乾燥機に入れて喫茶店や古本屋に行きました。
久々に行ったんですが両方の店主は私を覚えててくださり、そこにいるお客さんとも仲良くなり、やけにいい一日だなあと思い、バスでしたが浮足立って帰路に就きました。

寮に帰り、服を取ろうと乾燥機を見てみると、乾燥が終わったであろう機械が半開きになっていました。
これは次を待つ寮生が乾燥機の中を確認した際、開けっ放しにすることが多々あるのでよく見る光景でしたが、
中を見ると傍に置いていたはずの柔軟剤が乾燥した私の服に撒かれていました。

私が今から書くのは、これをやられたから悔しいだとか復讐したいだとかそんなことじゃないんです。

これに近しいことを私も以前やったことがあるのです。

だから、これをした人の気持ちはある程度分かってしまいました。
一応、言っときますが贖罪を書くつもりはありません。
ただ、書こうと思います。

記憶では大学の夏休み前だったと。
やけに機嫌が悪かったわけではなかったんです。

自分の服の乾燥が終わったと思い、取りに行った時、自分の服が籠の中に置かれ、ほかの寮生の服が乾燥機の中で回っていました。
今では思い出せませんが、その状況の何かに無性に腹が立ち、まだ十分に乾いていないであろう、回っている他人の服を止めました。

できるだけこの人には悲しんでほしいという気持ちを添えながら。

この、ただただ子供のような、魔がさしたような憂さ晴らしをした経験があるからこそ、
また、実はぶちまけられたとき、こんな嫌がらせの方法があるんだと感心し、一瞬ですが、あまつさえ他の人に私がこれをやるかもしれないという邪心のようなものに気づいたからこそ、
私は柔軟剤をぶちまけられたことに対して、純粋な悔しさや怒りを持てなかったのです。

感情を持つことに資格などいらないはずですが、なぜか私は怒りや悔しさをもつ資格がないように思えて、悲しいような情けない気持ちになっています。

もう一度洗おうと洗濯機に入れると、その匂いは黴菌のように私の両手に纏わり、常に気分を害するものになりました。
柔軟剤をぶちまけられた服は、もはや花の香りじゃないんです。

その手で書いています。
本当は不貞寝したいのです。
でも書くことがやった人に対しての精一杯のカウンターだと思ったんです。


これを書いてるうちにですがこんな考えになりました。

恐らくぶちまけた人間は私だったのでしょう。
そう思えたら、なんだか妙に納得してしまいました。









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