めんつゆにロックアイスを入れた。「ロックアイスを入れただけでこんなにもそうめんの味は変わるものか」と驚いた。部屋は一気にむしむしと暑くなり、行き場のない空気というとあれだけども、窓をあけない限りはここにあり続けるような空気を感じる。

最近は食欲がずいぶんと旺盛で、やたらと食べる。昔から食欲の増減が妙な周期で起きる。食欲がすごいあるときと、食欲なんてまるでない日々が続くとき。食欲があるときはおやつにラーメンを食べる、大盛りを頼まないと気が済まない、1食でも抜こうものなら空腹で気が気でなくなってしまうので、コンビニにかけこむ、会社のロッカーには常にカロリーメイトを常備する、などなどスポーツ選手なみにカロリー摂取を意識したりする。コンビニに行けば「糖質オフ」「カロリーオフ」に目が無い人を脇目に、一人「もっとカロリーをおくれよ……」とつぶやきながら高カロリーなものを買う。

昨日も同様におやつを食べた。袋ラーメンは常に3種類は常備してあるのでその中からチキンラーメンを選ぶ、「たまごポケット」なるものは、たんにたまごを入れるだけでなく、そこにちょぼちょぼとお湯を注ぎながら白身を固体化させていく場所だと知ったのは最近のことだ。ラーメン用のどんぶりに袋からチキンラーメンを出す。たまごをパカっとそのポケットに割り入れ…ようとしたところで、勢いよくたまごを叩きすぎてしまったせいか、キッチンの洗い場のふちにベトっと白身がからまってしまった。からまってしまった事実にひるみながらも、いそいで白身を引き上げる。「どうしようか」と考える暇もなく、たまごポケットにたまごを落とす。

困ったのは、洗い場のふちがとんでもなく汚かったからだ。改めてふちの上あたりの一面を見てみるとベトベトとした感じの汚さと匂いがあいまってしまっている。そこに白身がからまったからにはもう困ってしまう。でもその白身はもう魅惑のたまごポケットの上だ。

30秒ほど考えただろうか。もう空腹はきわまりないし、チキンラーメンは今皿にあるので最後だということまで確認された。このたまごをすてて、あらたにチキンラーメンを買ってくるほどのお腹の猶予はない。気がついたらお湯を注いでいた。

丁寧にたまごの白身部分を狙い、熱湯をちょぼちょぼとかける。2、3分待ってから意気揚々と食べる。食べながら、どことなくあのキッチンの洗い場の匂い、さびついたステンレスの匂いを感じる、ような感じないような、あれ、気のせいだろうかと思案しながら食べ進める。食欲が迷いをかき消す。

食べ終わってから腹痛がきたときは「もうダメか」と思ったが、幸い腹痛は一度トイレにいくとすぐおさまった。

そして今日。日曜日の朝、そうめんをすすりながらおもうことは、「そろそろ掃除をしなければ」ということです。とりいそぎ布団のカバーを洗濯機に入れました。また空腹です。ああ食欲。