僕はセキセイインコになった1話
「ムニャムニャうーん朝か。目がかゆい」
目をこすろうとしたら腕に違和感が。あれ羽じゃないか。身体を見たら蛍光な緑色。
僕は目が覚めたらセキセイインコになっていた。何も驚くことはない。いつも寝る前にインコになりたいと念じながら寝ていたんだ。ひとまずここはどこだろう。
鏡はどこだ鏡は。実際に自分の姿を確認したかったが飼われているインコではなさそうだし鏡などあるはずもない。ああないのか木の枝にいるみたいだしな。しかし、インコは立ったまま寝るというのがすごいよな。すると声が聞こえてきた。
「おおっ起きたか(チョチョチョイ)。これから飛び回るぞ(チョチョチョチョ)」
仲間のセキセイだ。辺りをよく見たら100匹以上いるじゃないか。いつもたくさんの仲間と飛び回るようだ。インコの食欲は無限大何かを食している者、準備運動のように羽をのびのびしている者、朝シャワーを浴びるかのように毛繕いしている者。
目移りしすぎて疲れるがある意味憧れのインコになれたのだからむしろ癒されている。その癒しの姿に自分が今なっているのだ。
そして風景からしてオーストラリアの自然のようだ。気候は温暖で暑すぎるくらい。いやインコにとっては最適な気候だから気持ちいいくらいだ。それにしても、この羽数はすごいな。人間の時は一人行動が好きだったから違和感がある。
「いくぞ(チョピー)」
リーダーインコの号令と共に一斉に仲間が飛び立つ。その羽音は迫力がある。巨大な扇風機が回っているかのような。小柄なインコの身体が天空一面を黄色と緑に染まらせ空間を占領する。
いくぞと言われても飛ぶのは初めてなんだが。ましてやこの身体をまだ知らない。仲間達が次々と空に舞っていく中、不慣れな羽を広げる。
「おおっこんな感じに広がるのか。羽ってすごいな」
羽にも骨があり、人間が両腕を広げるのと何ら変わらない感じで広げることができた。バババッと音を立てて羽ばたくと身体が自然に上空へ動いた。本当に身体が宙に浮くとはこのことだ。人間じゃ機械でも操らない限り空中に舞うのは無理な話だ。飛ぶということを自然体でやることができるという幸福を今感じている。人間なら初めてバイクや自動車を運転した時のあの感動に近いものだな。
一回飛び立つと人間が歩くのと変わらない感覚で羽を操ることができる。気分はパイロットそのものだ。しかも自分の身体能力だけで空中にいる。爽快な気持ちそのものだ。すると先ほど声をかけてくれた仲間が寄ってきた。
「どうだ気分は最高だろう(チョチョチョピーピ)」
「ああいいね。どこまでいくんだい?(ピヨチチョチョイ)」
「水飲み場までいくよ(ピーチョチョチョ)」
「ちょうど飲みたかったところだ着いていくよ(チョイピーピッピッチョイチョイチョイ)」
そう言いながら必死についていくことにした。
声かけてくれたあのイ……いや先輩と呼ぶか。先輩は次々と他に飛んでいるインコに声かけながらリードしているように見えた。体格はガッチリしている。野性のセキセイインコはなんか目は戦いの目をしているし、飛行に備えて鍛えているのかガッチリしている。
不慣れな飛行。慣らし運転をするかのように蛇行してみたり、急降下してみたり慣らしながら飛ぶ。おっ池がみえてきた。オーストラリアのインコのオアシス。もう少しで水飲み場だ。楽しいインコの日常がはじまる。
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