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つなぐもの


もうすぐ終わってしまうが、国立西洋美術館の話題の展覧会。

これについて書き始めたらきりがないので、収めております。


印象深かったのが、最後の部屋。

辰野登恵子さん、坂本夏子さんと、当館にも所縁深い方たちの登場。

途中では、このお二人が、どう出てくるのだろうといささか不安になったが、私からすると「最後を締めているのか!」「ああ よかった。」という心持ち。
未見の方は、ぜひ。

そして、大原美術館では、これ。

日本中の美術館で、図録も作る単独自主企画展がずいぶん減った。
ということは、それを作ったことのある学芸員も減るわけで、特に当館の場合だと、所蔵品での企画展示が多くなるので、図録までしっかりこしらえてとなると、10年おきの周年事業を待つことになる。
そして、この2020年前後が軒並み企画展を休止せざるを得なくなった。

そこで、三浦篤新館長の号令のもと、経験値のある私以外の学芸員でトライしたのがこの展覧会。
会場工作費も、宣伝費も、これまでの大原美術館の事業の比ではない。

そうした経緯ゆえ、内容に何かを言うのは控えているのだが、やはりぜひお勧めしたいのが、最後の部屋。

ARKOで制作された、北城貴子さん、水野里奈さん、そして坂本夏子さんの作品が並ぶ。
いずれも滞在制作の場である、児島虎次郎の暮らした無為村荘に強く結びついた作品なのだが、このうち、坂本さんの《訪問者》は、アトリエの内部をモティーフとしたもの。

西洋美術館の展覧会では、最後の部屋に、坂本夏子さんと梅津庸一君が合作した高橋龍太郎コレクションの《絵作り》という大きな木枠にカンバスを貼るシーンを描いた作品が展示されているのだが、私は、この絵と大原に並ぶ絵がつながっている感じが強い。

今回、はからずも日本に西洋美術を紹介するうえで重要な役割を果たした両館が、自館の歴史を振り返りつつ、現代の創作につなげていった展示を行っているわけだが、そのいずれの最後も、坂本さんが登場しているわけだが、さらに深くこの二つの絵で、つながっている。そんな思いを私はもっている。


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