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#52 百鬼堂農園(5) 農業ストロングスタイル

 市民農園に知り合いができた。東隣の区画の東さん(仮名)と、西側に2区画離れた大西さん(仮名)である。初心者の私に親切に声をかけてくれる優しいふたりである。大西さんは前回、ニラを自由に取っていいと声を掛けてくれたご老人。市民農園の先達であるふたりを追って紹介していきたい。が、しないかもしれない。

 育てやすそうな品種、4月半ばに種をまいたり苗を植えたりするのに向いている品種、収穫して食べてみたい品種。あれこれ考え、ノートに書き出す。読んだ本によると、連作障害や土壌の酸度を調べて考慮しなきゃいけないらしいけど、ごめんなさい、面倒くさいです。好きなモノを適当にまいたり植えたりしていきます。

 作物にとって地獄のような土壌で、強いものだけが生き延びる。生き残ったものこそが勝者。ストロングスタイルの農作物バトルロイヤルである。農作物虎の穴。どっちもかっこ悪いな。

 一応これを育ててみよう、というリストをつくり、スマホにメモしてホームセンターに行った。が、種からまこうと思ったものが苗で売っていたり、同じ野菜でも思いのほか種類がたくさんあったり。やろうと思っていたジャガイモの種芋はもう売り切れとのことだった。結局、目についた魅力的なものを適当に購入してしまった。予定になかった小松菜の種の試供品までもらってしまったので、わけが分からない。初手から間違っている気がするぞ。

 硬い硬い畝に園芸用ショベルで小さく穴をあけ、苗を植え、種をまく。岩のような砂利のような土をかぶせ、かるく押さえる。近所の公園でペットボトルに水をくみ、たっぷり水をやる。

 この日、苗を植えたのは、枝豆、スナップエンドウ、トウモロコシ。種をまいたのはハツカダイコンと枝豆。欲張りなラインナップだが、ちゃんと育ってほしい。本当に育つのか、ワクワクドキドキ、昭和の表現しか浮かんでこない。いや本当に大丈夫かね。

 初の種まきのあと、その日は休みだったのでサウナにいって、贅沢にマッサージ45分間を受けてきた。晩ごはんは私の担当だったので、パプリカとなすとオクラを入れた夏野菜のカレーを作った。充実の一日ではあった。いつか夏野菜を自前でまかなえる日が来るのを願いつつ食べたカレーは、意外なほどおいしかった。

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