百鬼堂

肩書きは記者だが、実情はほぼ編集者。衝動買いしたポメラで何かを書いてみたい、と思ったの…

百鬼堂

肩書きは記者だが、実情はほぼ編集者。衝動買いしたポメラで何かを書いてみたい、と思ったのがnoteを始めたきっかけです。

マガジン

  • 百鬼堂農園

    土いじりなどしたことのないオッサンが畑に挑みます

最近の記事

#52 百鬼堂農園(5) 農業ストロングスタイル

 市民農園に知り合いができた。東隣の区画の東さん(仮名)と、西側に2区画離れた大西さん(仮名)である。初心者の私に親切に声をかけてくれる優しいふたりである。大西さんは前回、ニラを自由に取っていいと声を掛けてくれたご老人。市民農園の先達であるふたりを追って紹介していきたい。が、しないかもしれない。  育てやすそうな品種、4月半ばに種をまいたり苗を植えたりするのに向いている品種、収穫して食べてみたい品種。あれこれ考え、ノートに書き出す。読んだ本によると、連作障害や土壌の酸度を調

    • #51 百鬼堂農園(4) 黒部の太陽

       考えるな、動け。  周到な準備を怠って痛い目に遭ってきた人生。でも勢いで適当にやって、うまくいったことだってある。いきあたりばったりでも、何とかなってきた人生ともいえる。準備したってうまくいかないこともあるし、周到な準備ができる能力もないのだから、適当にやるしかない。逡巡して何も始まらないというのが最悪、と思い定め、前へ。  まずは、 ❶耕して土を混ぜる ❷肥料など投入 ❸畝(うね)をつくる この3工程がやるべきことと思われる。  広い。とりあえず鍬を持って、振り

      • #50 百鬼堂農園(3) ロードバイクに鍬しょって

         初心者が農作物をうまく収穫できるのは半分程度、というような文章をどこかで読んだ。ならばこちらの目標はそれ以下の4割だ。NPBなら首位打者である。ただ、この連載が続く可能性も4割くらいではないか、との危惧は正直なところ抱いている。  今回は道具の話。  農具が借りられる大規模な市民農園は、うちから遠い。契約したところは、すべて道具を自前でなんとかしなくてはいけない。農具を畑に置きっぱなしにしてもいけない。車での来園は原則禁止。肥料だの農具だのを運び入れる際に短時間停めるく

        • #49 百鬼堂農園(2) 過剰融資契約

           「農業ほど知的な仕事はない。辞意表明をした静岡県の川勝知事は農業をやったことがないのだろう」との意見を、紙上で森永卓郎さんが開陳していた。なるほど、森永氏や伊藤翁の挑戦の記録を読めば、まさに農業とはそんなものという気がしてくる。  妻はあまり私のやることに反対しない。おそらく夫のやることに興味がない。今回の市民農園契約プランを相談したところ、開口一番「私は絶対に手伝わない」と宣言し、その上で「でもやってみたら?」とのことだった。いつの間にか夫が畑をほったらかし、いつの間に

        #52 百鬼堂農園(5) 農業ストロングスタイル

        マガジン

        • 百鬼堂農園
          5本

        記事

          #48 最近読んだもの(14) 鵺かキメラか、はたまたヨウムか

           ずいぶん暖かくなり、今季も公園でのチェアリングを始めた。チェアリングというより、野良読書という感じです。そんな言葉はないと思いますが。  このほどヘリノックス社製の軽い椅子を買ったが、ホームセンターで買った安いやつの方が、重いけど何というか安心感がある気がする。でも新しいのはカッコいいし座り心地も悪くないし、軽さは正義だから運んで使い倒します。野良読書もといチェアリングも、今季数回行ったところで、早くも夏日を記録するようになり、新緑の季節の短さを予感させる。まだ4月半ばな

          #48 最近読んだもの(14) 鵺かキメラか、はたまたヨウムか

          #47 百鬼堂農園(1) そして僕は途方に暮れる

           やっちまった。  雑草もなくきれいに整地された20坪の畑に立ち尽くし、思わずつぶやく。広すぎる。先日、市民農園を借りる契約をした。血迷ったとしかいいようがない。  何人かの同僚が野菜作りに取り組んでおり、楽しげに話しているのを聞いて、なんだかいいな、とは思っていた。そんな折、息子がこの春に家を出た。なんだか寂しくなり、ペットでも飼おうかと検討もした。だけど生き物は手間がかかるし死んだら悲しいし、飽きたからといって途中でほったらかすわけにもいかない。でも何か育てるようなこ

          #47 百鬼堂農園(1) そして僕は途方に暮れる

          #46 総括と激痛

           TBSのドラマ「不適切にもほどがある」は最高に面白かったですね。伊藤沙莉さんが好きなのもあってNHK朝ドラ「虎に翼」も楽しくみています。今回は備忘録に近い近況報告。需要などないだろうけど、なくてもいいじゃないですか。  合気道の先生にお願いして、剣杖の動画を撮影させてもらう。優しい先生で、稽古の合間にノートをとることも許してもらっている。真剣にやっているつもりだが、なんせ技が覚えられない。返し技も短刀取りも、つくづく難しい。道は遠けれど、なんとかものにしたい。  息子の

          #46 総括と激痛

          #45 UNIQUE CLOTHING

           卯月、名ばかりの昇進で辞令を受けた。  もはや昭和の儀式といっても過言ではない辞令交付のためにスーツをあつらえるのもどうかと思ったが、ユニクロでスーツを作ったところ、とても具合がよかった。  昨年冬、高校の卒業式と大学の入学式に必要だろうからと、息子がユニクロのカスタムオーダーというシステムでスーツをあつらえた。早く作っておいた方がいいと妻がすすめた。ユニクロの人に聞いたところ、3月だと間に合わないこともあるらしいから、やはり妻はすごい。できあがったスーツは、よく似合っ

          #45 UNIQUE CLOTHING

          #44 最近よんだもの(14) 黄砂と教養 

           特定保健用食品(トクホ)はともかく、機能性表示食品という制度には問題がありそうで、このたび健康被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。健康によかれと思ってのことなのに、本当に災難でした。コレステロール値がかなり気になる年齢の自分も、適当なサプリなどに安易に手を出さず、王道のダイエットを試みるべきなのだろう。同志のみなさま、いっちょがんばりますか。  以前紹介したことのある「世界のエリートが学んでいる教養書必読100冊を1冊にまとめてみた」(永井孝尚、KADOKAW

          #44 最近よんだもの(14) 黄砂と教養 

          #43 最近よんだもの(13) 空虚と運動

           出勤は午後からということが多いため、昨秋くらいから今春まで、学校を休みがちな息子と一緒に家にいる時間が長かった。ほとんど会話などなかったのだが、息子がいないとなんとなくさみしい感じが強い。この空虚な感じ、どうしましょうか。そうだ、本を読みましょう。ついでに、ドラゴンズドグマ2というゲームも始めましょう。ジムにも買い物にも行かなきゃ。動け。さもなくば本を読め。 「母の最終講義」(最相葉月、ミシマ社)  この著者によるノンフィクションは読んだことがなくて申し訳ないんだけれど

          #43 最近よんだもの(13) 空虚と運動

          #42 孟母三遷

           適当につけたタイトルで、孟子の母とは関係ありません。  息子の大学合格発表があってからの妻はまさに八面六臂。一人暮らしのための不動産屋とのやりとり、入学手続き、生協の加入や保険関係、必要な家電家財道具をリストアップして、手配。学校で必要なパソコンのスペックやサポートまで調べている。膨大な量の書類と作業を前に、恐るべき処理能力を発揮し、難題を次々と片付けていく。仕事をしながらその合間に料理や掃除や洗濯のやり方まで息子に教えている。かっこいい。  携帯ショップでのスマホの契

          #42 孟母三遷

          #41 春、衰弱堂の呪い 再び

           三寒四温を経て、また春がくる。最近は声をかけてくるようなことはないが、ふっと思い出すのは相変わらずだ。慣れた。いや慣れない。  しくじった。もう一歩踏み出していれば。俺のせいだ。いや違う。でもやっぱり。  毎日、何度も思う。  基本的に自死が報道されることはあまりない。幼子を道連れにする心中の記事は、読んでいていてやりきれない。分析ものや識者による、自死について書かれたものは、最近あまり読めなくなった。最相葉月の「母の最終講義」(ミシマ社)を読んでいて「この九年の間に

          #41 春、衰弱堂の呪い 再び

          #番外 劣等感と文化資本

           今回は息子の大学受験の話。学歴コンプレックスについて吐露していますが、学歴自慢や学歴マウントと取られる可能性もある内容かと思います。そんなもの読みたくない、という方はこの先に進まないようお願いします。  15行後に始めます。長いです。  息子が、一橋大学に合格した。  高校の卒業式から6日。発表の日は仕事が休みだった。発表は午後で、それまでなんとなく落ち着かない。体を動かしたいと思ったが、ロードバイクに乗る気にもならず、バッティングセンターに行くことにした。落ち着かな

          #番外 劣等感と文化資本

          #40 最近よんだもの(12)

           子どもの大学受験に関して、神頼みくらいしかできることがない、無力無能ぶりを遺憾なく発揮している父親である。涼しい顔をして心の中で応援しているつもりだったが、はかばかしい結果が得られておらず内心あせっている。でも無能な父にはどうしようもない。成瀬慶彦がうらやましい気すらしてくる。頑張れと言わずとも頑張っているのはわかっているが、頑張れと祈らずにはいられない。受験がすべてではないと理解している賢明な息子よ、頑張れ。 「世界は経営でできている」(岩尾俊兵、講談社現代新書)  

          #40 最近よんだもの(12)

          #39 書物とわたくし(3) 読書と体力、あるいは読書の体力

           ついにエルデの王になる。長い旅が終わった。  エルデンリングというPS5のゲームの話だ。それにしても難しすぎる。何度も理不尽に瞬殺され、何度も転落死して、何度も悔しさをかみしめ、何度も挑む。攻略動画やサイトを見て、ひたすらレベル上げに励む。達成感はあるけれど、もう一方でたかがゲームなのにこれほどの努力と時間と情熱をつぎ込んでお前はアホか、という思いもある。唯一、ゲーム好きの同僚がほめ称えてくれたのが救いか。やってられるかこんなもん、という思いを抱えながらも、ほかにするゲー

          #39 書物とわたくし(3) 読書と体力、あるいは読書の体力

          #38 最近よんだもの(11)

           どん詰まりだったエルデンリングは過酷なレベル上げを経て、モーグを皮切りに、神肌のふたり、マレニアを次々に倒し、一気に佳境に。楽しい。遊んでばかりはいられないけど。  「自由の丘に、小屋をつくる」(川内有緒、新潮社)  子どものため、自分のために、思い立って田舎に手作りの小屋を建てる話。面白いです。何か大事なものを作り上げる喜びが、この本にはある。  この著者も、頼りになる友人知人がとても多い。よいことだ、と思うし、なんだかうらやましくもある。こちらにそんな人脈がいない

          #38 最近よんだもの(11)