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短編創作「センスの無い神様」



生まれ付き足の悪い少年がいた。

車椅子生活を余儀なくされ、楽しそうにサッカーをする友達を横目にふて寝する日々。


いつかグラウンドをおもいっきり走り回りたい。


ふぅーっと溜息をつき、窓の外に自由に飛び交う渡り鳥をボーっと眺めている。



鳥は自由でいいな。


う… 飛んでみたい。




ふとしたきっかけで、夢はその姿を変貌させる。いつかグラウンドを全力で走り回りたいという願望から、空を自由に飛び回ってみたいという希望へと。


大空をゆっくりと駆け巡るペガサスのような、凛々しくも雄大な翼が欲しい。


サンタさんへのお願い事も、現実的なスニーカーから、まるでファンタジーのような壮大なものへと変わっていった。


来る日も来る日も動かぬ足を見つめては、いつか大空を飛び回りたいんだと無垢な気持ちで願う少年。


そんな少年のピュアな願いとは裏腹に、突如不運が襲い掛かった。


車椅子での散歩中、飲酒運転のトラックが歩道に突っ込んできて側面から大衝突した。皮肉にも空へと飛び立つ鳥のように、車椅子ごと宙へと舞った。ニュースでも取り上げられるぐらいの大事故だった。


誰しもが絶望を想像したが、幸い一命は何とか取り留めた。しかし、意識不明の重体だった。


スローモーションのようにゆっくりと宙を舞い、薄れゆく意識の中で、なおも翼が欲しいと願う少年。


3年の月日が経過したある日、ベッドの上で奇跡的に少年が意識を取り戻した。ざわつく看病中の両親。


眩しそうに眼を半開きにし、もぞもぞと何やら背中に違和感を覚えている。


!?


少年は驚きと共に念願が叶ったかのような嬉しそうな表情をしている。


あまりの嬉しさにベッドから転げ落ちると、しゃがんだ状態で背中にグッと力を入れて翼を羽ばたかせ、病室の窓を勢い良く飛び出した。


ぐんぐんと大空へと駆け上がって行く少年。



「やった やったー!!ありがとう神様!」


嬉しそうに何度も大空を旋回している。




病室にいる母「 …あれって、翼って言うよりだよね? 」

病室にいる父「 そうだなぁ。しかも銀バエの。 」



< Fin >


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