見出し画像

水槽の中に住み、陸上の学校に通う『さかなくん(しおたに まみこ著)』#よみもの

我が家と息子が通う保育所のちょうど中間に、市の中央図書館がある。
保育所の帰りに新しい本を借りては、寝る前、せがまれたときに息子に読みきかせをする毎日。
週に15冊借りているとすると、年間700冊以上も読んでいることに。
読みっぱなしではもったいない。
心に残った本の感想を備忘録として綴っていきたい。


『さかなくん』

著者:しおたに まみこ 
発行日:2022年5月11日
ページ数:32ページ 対象年齢:3・4・5歳
受賞歴:全国学校図書館協議会・選定図書(2022)
    MOE絵本屋さん大賞3位(2022)

絵本ナビ

あらすじ

小学生の『さかなくん』は水の中で暮らしています。学校に行く時は、水槽ヘルメットをかぶり、足びれが乾燥しないように保湿クリームを塗るのです。頭は重いし、ズボンはぴちぴちだけど、さかなくんはくつがキュッキュとなる音が好きだから歩くのきらいではありません。友達とふれあう時間、勉強も遊びもおひるごはんも好きです。ただひとつ、さかなくんが嫌いなことは体育。とくにかけっこが苦手なのです。

感想

魚が二足歩行で陸上の小学校に通い、人間や他の動物たちと過ごすという、ありそうでなかった設定にまずひきこまれる。

リレーの練習をしているときに転んでしまって、早退したさかなくん。
おうちにトカゲさんとにんげんさんがとどけてくれたローラースケートをはいて、次の日からはすーいすーいと学校まで走っていけるというのが、このお話の結末だ。

ますます学校生活を楽しめるようになったさかなくんの様子をみて、ほっこりしあわせな気持ちになれた。

ストーリー以外で、この作品の印象に残るのはやはりディテールにこだわったイラストだ。

さかなくんの水槽型のお部屋のインテリアがかわいい。
もしも水の中に住んだらこんな感じなのかなと、目をキラキラさせて部屋を見回すにんげんくんに自分を重ねてしまう。

よく見ると、指が4本しかないからキツネは字を書くときに鉛筆を支える補助器具をはめていたり、お昼ごはんの時間にはさかなくんが水槽ヘルメットのふたをとって水草をつっこんでいたり。

なるほどと思える細かい描写があって、作者自身がめちゃめちゃ楽しんで描いているんだろうなと想像する。

1回目はストーリーを追って、2回目はイラストの細部に目を凝らすのが、この本のおいしい楽しみ方なんじゃないかとおもう。

多様性の尊重とか、公平性とは何か?とかこむずかしい意味は求めず、ただただこの本の世界にひたってほしい。

おまけ

しおたにさんの他の作品はこちらから。
『さかなくん』以外の作品は木炭鉛筆で描かれているものが多い。
かわいいのにシュール。どこか不気味な白黒の世界。それが子どもの好奇心に火をつけるのかも?


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?