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アナログバイリンガル(409文字)ショートショートnote杯

「デジタルバイリンガルよりアナログバイリンガルだよね」
 私がそういうと、夫が反論する。

「いやデジタルだろ。要するに自動翻訳機がデジタルバイリンガルで、昔ながらの通訳がアナログバイリンガルってことだろ」

「そうよ。人間だとこちらの表情まで読んで訳してくれるから間違いが少ないと思うの」
「じゃあ、そうしろよ」
「冷たいのね。そうするわよ」

 日曜日、ロシア人との商談に通訳紹介センターからなぜか8人の外国人が来た。

 唯一、日本語がわかる人が、皆、二か国語しか話せないという。一列に並んでもらった。
日本語、イタリア語、中国語、ポルトガル語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、韓国語、ロシア語の順で訳していくそうだ。

 さっそく、商談が始まる。
「バッグの色とサイズは何種類ありますか?」
 次々と色々な言葉で通訳たちが話をつなげる。
帰って来た答えは、
「私の背中は一つです」
 ダメダメな伝言ゲームだった。

 8人分12万円の請求書が届いた。

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