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「入試と母」

●母の思い出

 夜、母と話をしていました。                
 母は静かな声で話しました。                
 なんの話かというと、                   
 入試のことなのです。                   
 
 母は高校入試に失敗したそうです。             
 合格発表があった日                    
 一歩も家から出られなくて                 
 泣いていたそうです。                   
 
 だから世間話などで、                   
 あの子は入ったとか、                   
 この子は落ちたとか、                   
 そんな話は一切しません。                 
 
 今になってみると、                    
 あのときの事が                      
 ひどく役に立ったといっていました。            
 
 心のやさしさの大切さ。                  
 いろんな人の気持ちや立場。                
 それが分かることの大切さを                
 その体験から学んだそうです。               
 
 不合格を冷たい目で見ない母を               
 ぼくは尊敬します。                    
 
 今夜、母が一層好きになりました。             
 母を前より尊敬する気になりました。            
                            
     (『進路・進学と高校受験の基礎知識』あゆみ出版より)

―― 以上です。
皆さんは学級通信を書くときに読者を意識して書いていますか?
ボクにとって,
第一の読者は,もちろん,目の前の子どもたち(生徒)です。
第二の読者は,子どもの保護者です。
第三の読者は,職員室のセンセイたちです。←(この話はいずれまた)

この通信は,実はおもに保護者に宛てて書いています。
進路面談が重なり,受験校が画定する12月はじめに発行します。
子どもの進路決定を支えるのも妨げるのも,保護者の言葉,無意識です。
我が子と別の子をついつい比べてしまう。
親の見栄,過剰な期待,過小な評価…いずれも,受験生を苦しめます。
この詩に描かれた「母」の姿を鏡に我が身を映してほしいという気持ちをこめています。
それをストレートに書く手もあるでしょう。
でも,ボクは,詩に託します。


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