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「強く生きる」って…

「強く生きる」ってどういうこと?

ジョージ秋山さんという漫画家がいました。
ボクは小学生の頃からジョージさんの漫画が大好きでした
(代表作『アシュラ』『銭ゲバ』『浮浪雲』・・・)。

その中に小学生の男の子を主人公にした作品『花のよたろう』があります。ボクと同じくこの漫画を好きな小原茂巳(おばら・しげみ)さん(覚えていますか。2年生の時に3組で特別に授業をしてくださった先生です)が
『花のよたろう』最終回のセリフを紹介しています。
以下,引用―― 

強く生きるって どういうことなんでしょう・・・・
生きるっていうことですから・・・
どんなことがあっても 死なないこと・・・・
それだけで たいしたもんです・・・・

わたしはこう思うんです・・・
だれにでもある やさしい気持ち・・・
・・・ それが 強くなることではないでしょうか。

やさしさ プラス 強さ。

たとえば わたしが 子供のころです。
イヌを飼っていたんです。
小イヌのときから わたしがかわいがって
育てました。
イヌの名前は タア坊といいました。

わたしは いつもタア坊と一緒だったんです。
寝るときもですよ。
ところがある日・・・
タア坊は わたしの見ている前で
ダンプにひかれてしまったのです。
タア坊の内臓は 無残にも アスファルトの道路に
散らばりました。

わたしは どうすることもできずに 
ただ泣くばかりでし た。

ゲタ屋のおじさんや 自転車のおじさんが出てきて
早くなんとかしなさい
きたないじゃないか
そういって わたしに どなったんです。

わたしはタア坊の無残なはらわたを見て
めまえさえしました。

そこへ
父が自転車で通りかかりました。
父はだまって上着をぬぎ
手づかみで タア坊の散らばった内臓をひろい
上着でつつみました。

わたしは そのときの父の顔が 忘れられません。

わたしは・・・あのときの 父のように・・・
強くて やさしい 人間になろうと 決心しました。
でも いまだに なれません。
いつもわがままをいったり
人を傷つけてしまうんです。

だけど 今でも あのときの決心した努力は
しているんですよ。

―― 引用終わり。

強くてやさしい人間になりたい

ここから小原さんの文章です。

以下、引用 ――
この『花のよたろう』は,
『週刊少年チャンピオン』に連 載されていたものです。
子どもたちが,いっしょうけんめい 走っている姿,
子どもたちがニッと笑っている顔・・・僕は大 好きなんです。
今回紹介した文は,『花のよたろう』の最後 の最後の部分です。
これらのセリフは,僕の印象にとても残 っているので,ここに記録します。

僕も,やっぱり
「いつもわがままをいったり,人を傷つけて」しまっています。
でも,僕も,やっぱり,
少しずつでも いいから,強くて,やさしい人間になりたい。
あこがれです。

なれません、でも、あきらめません

息子ケイくんが生まれたころ,ボクはこの小原さんの文を読みました。
そして,小原さんと同じように〈『花のよたろう』に出てくる父のようなオトナになりたい〉とあこがれました。
そして、「なってみせる」と幼いケイを抱きながら心に決めました。

でも,いまだに なれません。
60歳にもなったのにねぇ・・・。
いったい,いくつになったらなれるんでしょう・・・。
でも,いまだに 
そんな人間になることをあきらめてはいません。
シブトイなぁ(笑) 

―― これは今から5年前に中学3年生(ボクにとって最後の卒業生)あてに書いた学級通信です。子どもたちの人生は子どもたち自身のものです。オトナがとやかく未来を描いて見せるのは、ひょっとして「小さな親切・大きなお世話」かもしれません。それでも、ボクは、子どもたちに「こんなオトナになってほしい」という願いを抱き続けています。それは、実は、「自分がこんなオトナになりたい」という願いといつも重なっています。ボクとしては、人生を押しつけているのではなく、共に目指そうという感覚ですけれど、子どもたちはどう受け取っていたのでしょうね。


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