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『デジモンアドベンチャー02』(2000)簡易感想〜ブイモン系のテイマーはデジタルワールドが真の危機を迎えそうな時のみ戦う〜

さて、映画「02 THE BEGINNING」を見たことで、定期的にぶり返してくる妙な「デジモン熱」みたいないけない癖が再発したようなので、そうなると以前交流があった方までこちらに引き寄せてくるようで。
私が気になっていた方のデジモン二次創作も無事に完結されていたということで、この波に乗って私も「デジモン」の感想・批評をあげていくべきかと思って、次のトピックにはしばらく困らなさそうだ。
そんなわけで、改めて見直したこの「02」の感想・批評を簡潔ながら上げておこう。

評価:D(凡作)100点満点中50点

本作に関してはとにかく評価が分かれるものになっていて、前半が-50点、後半が100点での差し引きで合計50点という内訳になっており、とにかく前半はもう目も当てられない程に酷い
理由としてはとにかくまず主人公の大輔を「いじり」の範囲を超えた「いじめ」「嫌がらせ」としか言いようがない不愉快な足の引っ張り合いみたいなのが目について仕方がないが1つ目にある。
だがそれ以上にもっと目についたのはただでさえ大嫌いだった無印のやつらが今度は「先輩」などと言って出しゃばってくる古参の老害ムーブみたいな描写である。
特に大輔がライドラモンになる友情のデジメンタルを手にする回で太一とヤマトが言っていた「とにかく喧嘩した方がいい」というのは何だか高校や大学の部活・サークルにいるタチの悪いOBOGみたいだ。

私自身も経験があるのだが、大学の部活に卒業して何年も経つ社会人をやっている人たちが有事の際に部室にやってきて現役の奴らの運営に上から目線でああだこうだと管を巻こうとする。
現役の後輩たちは別にその先輩たちが現役で活動している時代を見ているわけではないのだから、先輩たちが築き上げた伝統の上に今の部があるんだなという感覚はそうそう誰もが持てるものではない。
しかし、日本社会では「後輩は先輩を立てるのが礼儀」などという悪しき縦社会の風習があるものだから先輩である太一たちの方が大輔たちよりも偉いなどということになってしまう。
だから大輔たちも表面上はそんな先輩たちを敬うふりをしているし、太一たちも後半になるにつれて段々自分から離れていく大輔を見てその背中を見送るなんてことしかできないのだ。

大輔がなぜ前半であんなに空回りしていたのか、そしてなぜ八神ヒカリがあんなにミーハー気味に大好きなのか、そしてなぜ姉のジュンと不仲なのか、全ては「大輔が八神太一たらんとしたから」である。
ヒカリに構っていたのだって半分以上はサッカークラブにいた八神太一への憧れがあったからでしかないし、姉のジュンと仲が悪いのもべっとりネチョネチョ依存気味の八神兄妹の正反対として描かれていた。
大輔とタケルがあんなに険悪で親友になれなかったにも関わらず、後半でジョグレス進化のパートナーである一乗寺賢と親友になれたことが全てを証明している。
そんな初期は最悪だった「02」の本筋が本格的に動き出すのは大輔が「八神太一の呪縛」から解放された後半からだが、その最初のステップがキメラモン戦での奇跡のデジメンタル・マグナモンへのアーマー進化だ。

あそこで初めて大輔は「太一先輩・ヤマトさんのコピー」ではない「本宮大輔自身の個性」としての「奇跡」が付与され、その上で決定打となったのが後半のパイルドラモンへのジョグレス進化である。
あの話での大輔の熱い説得を通して魂の双子が心を通わせ、単独では無理ではないかという敵をも超えられる「無限の可能性」として出てきたジョグレス進化は名曲「beat hit!」もあってデジモンで一番好きな曲である。
あの曲は歌詞もまた深くて、特にこの部分が美しい。

Standing by your side!
1000年前も僕たちは戦っていた
Stand up to the fight!
1000年後に僕たちが笑い合える
未来のために

そう、大輔と賢、ブイモンとワームモンを中心にした本作の戦いは決して無印のような一夏限定の戦いではなく、未来永劫何千年も何万年も先の未来で笑い合えるようにするための戦いなのである。
光と影自体に善悪があるのではない、自らの意思でどちらにつくかを選び、終わりなき戦いを続けていくのが大輔たちの戦いであり、表面で描かれている以上に本作の戦いは遠大過ぎるのだ
大輔に関する個人的な思い入れは以前の「02 THE BEGINNING」の評価やマグナモンに関する記事でも書いたのでここでは置いておくとして、本稿で改めて強調しておきたいのは「何のための戦いか?」である。
本作の戦いは前作で太一たちがウィルス種=闇=悪という排他的差別主義と「選ばれし子供」という選民思想が乗っかった言葉を大輔が「俺は特別でも何でもない」でひっくり返す物語だ

一見「そんなに軽くていいのかよ?」とお思いであろうが、選ばれし子供は02後半になると決して特権化されることはなく、平準化されて後世の子供達に引き渡しがなされていく。
それをあくまで「高石タケル視点の小説」としてメタ的にまとめ直したのが本作であって、だから意図的に都合の悪い部分は伏せられた可能性が高く、実際の「02」とは違っている可能性もゼロではない
そして本作の評価で改めて強調しておきたいのは「ブイモン系のテーマーが主人公として動くデジモン作品は本当の意味でのデジタルワールドの危機」ということである。

今までブイモン及びブイモン系のテイマーが主人公の例としては「Vテイマー」の八神タイチとゼロマル本作の本宮大輔とブイモン、ゲームの方だが秋山遼とブイモン、そして「デコード」の四ノ宮リナとブイブイである。
合計4人のブイモンテイマーがいるわけだが、このうち秋山遼は本来なら本宮大輔が行うべきタスクを一時的に代行していたに過ぎず、その後「テイマーズ」で正式に違うパートナーデジモンが出たので除外しよう。
残った3人のブイモン系テイマーはいずれもが七大魔王に縁があるテイマーたちであり、タイチと大輔はデーモン、そして四ノ宮リナはバルバモンとの縁があり、いずれもがダークエリアにいるデジモンたちだ。
古代種の中でも別格に強いブイモンのテイマーであるということはそれだけ課される使命や試練も苛烈なものであり、それを「全然大したことない」と涼しい顔して立ち向かえるのが彼らである。

だから本作の最終回がなぜ25年後に息子たち世代に引き渡すことになったのかも必然であり、大輔を中心になってあの後も必死にデジタルワールドと人間界がスムーズに行き来できる世界を作り上げたのだ。
まあそれを考えると余計に無印組は大輔たちに散々酷いことしたものだと思うが、おそらくアニメの太一が本作でも変に出しゃばっていたら間違いなくデジモンカイザーの賢が味方になって生存するルートはなかったであろう。
本作において太一たちが特に後半からは完全に脇に追いやられているのはそういう理由である、闇やウィルス種への嫌悪・差別が凄まじい彼らでは事態を悪化させてしまうからだ。
光も闇もなく、どんな子供たちの人生も「ラーメン」の一言で肯定してしまえる本宮大輔とブイモンが中心じゃなければこのデジタルワールドは救われなかったのだから。

そして本作でその辺りの是正がなされたからこそ、次作「テイマーズ」がワクチン種・ウィルス種・データ種の三竦みをしっかり揃えて筋の通ったお話にできたのではないだろうか。
だからこそ私は無印よりも本作の方が好きではあるし、お世辞にも名作とはいえないまでも、前作及び前半で先輩たちがやらかしたツケを後輩たちが必死に清算するあの流れがとても良いので、やはり評価はD(凡作)に収まった。

ブイモン系のテイマーはデジタルワールドの真の危機にのみ戦う、そのスタンスを「Vテイマー」と並んでしっかり固めたのが本作ではないだろうか。
だからこそそんなブイモン系のテイマー同士が夢の共演を果たす漫画版のコラボ回が大好きであり、大輔とブイモンのファンは絶対に必読である。

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