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0Hz - 1Hz 『駆け抜け過ぎて秋』


オープンして1ヶ月が経って、店を開業することが決まった秋からのことを思い出してみた。 


正式に決まったのは9月の中旬頃。
それまではゆっこから話だけしか聞いてなくて、やるとは言ったけど「本当にやるのかなあ」と疑心暗鬼レベルに過ぎなかった。

実際にお店を見て、お金や引き渡し日、諸々の条件などが正式に決まり、やっと実感が湧いてくる。
そこから早急に報告すべき人に報告、オープンまでのタスクや大まかなスケジュールを決めたものの、実際にお店を引き継いだのは10月の中旬頃。

居抜きとは言え、元々ラーメン屋さんだった場所をBARに変えるわけだから、それなりに準備期間が必要なはずだった。
しかし、計画性皆無のオーナー②は、「覚えやすいからオープン日はポッキーの日の11/11にしよう」というオーナー①の提案をさも名案かのように受け入れ、じゃあプレオープン日を11/1にしようと決めた。
共同オーナーのどちらかは持ち合わせていないといけないはずの『計画性』を、不運なことにどちらもどこかに置き忘れてきたらしい。


かくして、ラーメン屋さんを引き継いでから約2週間で『BAR』に変身させるべく、2人きりでの内装作業が始まった。

工事は一切入れず、多くの人に協力を仰ぎながら作業したあの期間、今振り返ると随分昔のことのように思えるから不思議だ。

2人とも初めてのことばかりだから、1行程に1回は必ず失敗があって、その度に「じゃあ、こうすればいけるしょ」の精神でどうにか修正して、徐々に徐々に『BAR』に近づけていった。

それでも、プレオープンの3日前まで大量の木がブルーシートの上のカウンターに並べられ、地面は工事現場くらい汚いという有様。酒はまだ1本もない。
とてもじゃないが『BAR』とは呼べない状況だった。

2日前に全ての木を嵌め、前日昼にお酒が届き、夜に掃除をして、何とかお店としてプレオープンを迎えられる準備が整った。
深夜0時を過ぎてカウンターのお客さんの席に座って1人でウイスキーを飲んでたら自然と涙が溢れてきた。


2ヶ月前にゆっこがこの話を持ってくるまで、こんな店を自分がやるなんて想像もしていなかった。


ゆっこは2年くらい前に西荻でできた飲み友達で、どうやったら面白いエピソードトークを話せるかどうかをいろんな居酒屋やバーやシーシャ屋やスナックで話す、割と痛い間柄だった。
その中で、「一緒に飲み屋やれたらいいね」みたいな話がうっすらと出ては消え、出ては消え、自分の中では完全に消えつつあったタイミングだった。


それが今、はっきりと目の前にある。
『bar Hz』なんて、
想像していたよりも遥かに『BAR』な姿で。


トライ&エラーの繰り返しだった、文化祭準備期間のような日々。
何も無かった場所を、特別な場所に変えていく日々。
この場所を、このお店を、早く皆に見てほしいとワクワクしていた日々。

一生に一度体験できるかできないかの日々だったけど、ゆっこは作業が失敗する度に「これで2店舗目はめっちゃ早くできる」と言っていたので、もう1回体験するのも悪くないかもしれない。
今度はちゃんと忘れずに『計画性』を持っていこうと思う。


オープンしてからの日々は、

めっちゃ楽しい
毎日来てくれてありがとう
もっとがんばるね

の3本です。


この1ヶ月、エピソードトークにできそうな話が50個くらいあったはずなのに全部忘れてしまった。
それくらい濃く、速く駆け抜け過ぎて、気付いたら冬になっていた。

来月はどんなエピソードトークが待っているだろう。今は毎日が楽しみで仕方がない。

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