見出し画像

アニメ【推しの子】感想

推しの子のアニメを見た。

推しの子はいろんな意味で話題になっていて、予告やあらすじを見て困惑したり、見る気をなくしたりする人もいるっぽい。
アイドルに子供ができて、その事実を隠しながら活動するという話だからだ。

自分もちょっと変な気持ちがして、見る気になれなかったのだけど見てびっくり。
転生系のアニメの中ではぶっちぎりに面白いと思った。
推しの子を言い換えると「転生したら推しの子供だった件」みたいな感じだ。

面白いな、よくできているなと思った理由は、
アイのファンの視点と子供の視点という二つの視点があって、それがゴローが転生した時点で入れ替わることだ。
だから、アイに感情移入できる。物語の最大の謎である実父が気になる。
物語に引き込まれる。
大抵の物語は主人公に感情移入するようにできているから、推しの子でもゴローの視点移動はそのまま視聴者にも適用されるわけだ。

▼二つの視点
・アイドルが隠れて男と子供を作って、母親をしているという偏ったファンの視点(ゴロー、リョースケ、視聴者)

・母親がアイドルをしているという子供の視点(アクアとルビー、視聴者)

一つ目の視点は、主人公とリョースケでレベルが違う。
アイに子供ができたと知ったゴローはショックを受けるレベルだが、リョースケは殺意が芽生える。
アイドル好きの視聴者は、リョースケほどではないにせよ、多分似たり寄ったりの感情を持ったと思う。

自分もアイに対して負の感情が芽生えた。しかし物語が進むにつれてだんだん負の感情が消えていく。90分もある1話が終わるころ、アイに対する負の感情は消えた。

その理由が視点の切り替えだ。
ゴローが転生してアイの息子のアクアになる。
この時点で視点が「ファンの視点」ではなくて「子供の視点」になる。

ただし、視点は切り替わるのだが、この時点ではアイのことを良くわかっていないためか視聴者としてはファン視点が少し残っていて複雑な感情になった。
ファン視点での感情が解消されず置き去りにされているような感覚だ。

というのも
「アイドルが母親をしている(ファンの視点)」のと
「母親がアイドルをしている(子供の視点)」のでは全く意味が違う。

例えばアイの「母親としての幸せとアイドルとしての幸せどっちもほしい。星野アイは欲張りなんだ」という発言。

ファンの視点では開き直っているように聞こえる。
子供の視点ではとてつもない努力や苦悩を覚悟している発言に聞こえる。

なんとも不思議な感覚で、どちらも本当にそう感じるのだから仕方ない。
どれが正しいのだろうか。

物語が進み、リョースケがアイを刺し殺すシーン。
リョースケはアイを刺して「だましたな!」「見下していたんだろう!」と絶叫する。
それに対してアイは血を流しながら「私なりのやり方で愛していた」と言う。刺されながらも真剣にアイドルをやってきたと真剣に伝える。

このシーンを見ると、ファン視点がいかに偏っていて独りよがりな考えなのかというのに気づかされる。
いかにも開き直っているかのような発言は、なぜそう聞こえたのか。

アイドルはファンを楽しませるために嘘をつく。それはパフォーマンスであり、やはりアイドルは嘘でできている。しぐさ、発言、好きなもの、嫌いなもの、プロフィールそのすべてが。

ファンはパフォーマンスを楽しむ。しかし嘘だと思っていない。どこか本当だと思って楽しんでいる。ファン側にはそういう思い込みがある。
しかし、その思い込みがあるから熱狂できる。アイドルは嘘でできているとどこかで分かっていたら熱狂できない。

だから嘘だ、という事実をたたきつけられたときに、その嘘がファンを楽しませるため、とは思えなくなる。
だまして金を出させていた、とかそういう類の考えに染まってしまう。
しかし、よく考えるとそんなわけがない。


確かにファンに嘘をつくことで楽しませる。それが高いレベルでできればアイドルとして成功するわけだ。それはお金を出させることにつながる。
じゃあお金をださせるために嘘をついたのか?
そういうアイドルもいるかもしれない。
でもその嘘というのは、アイドルとして大事なピースかもしれないが、すべてではない。

いいパフォーマンスをするための、ものすごい努力や苦悩があった上で、最後に嘘で飾るというのが実態なのだと思う。
金だけ考えればアイドルなんか絶対にコスパ悪いし成功率も低いし。
だから嘘が判明したときにファンが感じる感情は多分そんなに正しくないのだと思う。

そういうことがアイが刺されるシーンで頭の中に駆け巡った考えだ。

このシーンで、これまで置き去りにされていたファン視点での負の感情が完全に消える。
その後、アクアが、実父が黒幕だということに気が付いて第一話が終わる。


もしも、推しの子という作品が、アイが主人公で、単に子供を隠しながらアイドルをやる話なら、視聴者も犯人と同じ感覚でイマイチ感情移入できなかっただろう。
無駄に賛否を呼ぶ変な作品になっていたはず。

さあもう一周しよう。
そしたら原作買います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?