『座る』#272

彼女が椅子に座ったときの脚を組んださまがとても美しいもので毎回、見惚れる。
164番で床坐の「坐る」について書いたけれど今回は常用漢字の「座る」について。主に椅子座を考えて。
冒頭に書いたような話、椅子に腰掛けるその姿だけでかっこいいと思わせる人間ってなかなか稀有なものだとは思いましてほかに誰か椅子に座っている姿だけでグッとくる人は誰かいたかなと思うと二人、東出昌大さんと竹野内豊さん、俳優のお二人。後者の竹野内豊さんはたしか、化粧品のウーノのCMかあるいはポスター写真かあるいは何かの雑誌の表紙で見た写真か、何を具体的に見たのかはわからないけれど、背もたれを横に回して肘をかけて半身を委ねるように座っている姿が物凄くセクシーで大人っぽくて、これは男性俳優でなおかつ竹野内豊さんか、あとは阿部寛さんとか豊川悦司さんとかのような渋みと色気の混じった人にしか出せない空気感だなと思ったもので、あとは映画ニシノユキヒコの恋と冒険で演じていた姿からもそう感じたもので、この人はすごいなと感じ入った。まっすぐ座るでもなく、お尻より腰や脇腹を使ってもたれて腰掛ける感じ。そういうスタイルと役柄でマッチしていたんだろうな。それで前者の東出昌大さんについては静止画ではなくて、トーク番組おしゃれイズムにゲストで出演していたとき、スタジオセットの赤いモダンな椅子に座っているのに、フランクな人間味をそのままに出して「あぁこの人は心根の優しい人で真に“いい人”なんだ」と思わされた最初の機会で、それから私は大ファンになってしまったわけだがそれからというもの、特にドラマではなく本人が素で出演している番組で毎回、椅子をも飲み込むキャラクターでいたのでもう、本物だと。彼の人懐こさと真摯さと紳士さ、座った姿で特筆してはしまったけれど何をしても彼の人の良さはにじむ。
座るその姿と、連関している座り方とで人の印象に良し悪しがついてしまう、言い過ぎかもしれないけれど、おおよそ、そう。
スポーツ選手であったり芸事の演者さん(って言い方で全て括ることができるかわからない)であったり、ごく細かな動作・振る舞いを見るだけで熟練度がわかることがある。
座る動作ひとつ、それはスポーツでも芸事でもなく、ひとの日常の機微があらわれる。
きっかけは夜勤明けの帰りの電車で座る私の向こう側、窓に映る自分を眺めてふと苦い思いに浸されたことにありました。

#座る #180916

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