『酢』#338

さしすせそのす。料理のさしすせそ、五音全てを料理で使うようになったのは、必要に駆られて自分のために料理をするようになってからのこと。5つそれぞれ書いてみる、その三音め。
酢、そのものは、あ、すのもの、酢の物でなく、そのもの、は、大人になるまでちょっと苦手だった。嗅げばむせるし、梅干しと違って口が酸っぱいという以上に喉が酸っぱい。人間の管、くだの方に刺激が強い。高校の化学の時間に酢酸CH3COOHの化学式を習ったときからずっと、その字面を見ると口が酸っぱくなってくる。字面の時は口が酸っぱい、というのも変な話だ。とにかく、酢の酸の刺激が子どもの私には強烈だった。大人になったのは、大学時代のバイト時期から。
大学時代のバイトのひとつで、飲む酢やジュースを取り扱う、超うまいジャムやドレッシング等を扱うお店で働いたことが数年間あった。そこで多種多様で季節の旬の果物や野菜と合わせられた美味しい酢のドリンクを知って色々味わって、グンッと、酢が身近になった。大雑把な把握の仕方ではあるけれど黒酢がありリンゴ酢があり米酢があり、ひとつひとつにそれぞれの味と風味、合わせるものとの相性があって、特に興味深かったのが酸味の強弱で、黒酢に感じるコクと強めの酸味、リンゴ酢に感じる爽やかさと軽やかな酸味、ここに振れ幅が大きくあることで、まず飲む酢においては購買の対象とする相手が変わり、調理にあたっては合わせる料理に加えて分量まで変わる。CH3COOHのモル濃度まで考えが至った。面白い体験だった。
じゃあ調理に何を使うか。選ばれたのは黒酢でした。ツンとくる米酢と違いまろやかさのある黒酢、主にラーメンに足したりドレッシングに調味したりと、プラスワンな使い方をしている。じゃあ調理にはというと、夏場によく作る酸辣湯。鍋に細く切った玉ねぎと豆板醤を入れて軽く炒め、そこに飲みたい分の水を入れて沸かす。温まってきたら顆粒の鶏がらスープをパラパラ加えて、沸いたら乾燥わかめを入れる。酢を大さじ二杯くらい入れて(わたしは酸っぱいもんが好きになった)、玉ねぎが好みのかたさになったら火を止めて塩胡椒をし味見をして、溶き卵をサーっと糸状に回し入れる。蓋をして少し待つ。卵が固まってきたら、器に注ぎ入れて、ラー油を適当にかけ回して、完成。胡麻を振るとか刻み葱を入れるとかそのへんはそのときの余裕次第。毎回作って美味しく飲んで、酸辣湯ってなんだろうなと思うけど、辛くて酸っぱい、健康的なだしスープ、というところだろう。
冬になってからめっきり酢を使ってないから、思い出すのに一苦労なレシピであった。年間通したら一番使用量が少ないかもしれないで酢。

#酢 #181121

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