賃貸の退去時クリーニング費用は無料にできる?→国交省ガイドラインを引用して解説
※ガイドラインには一人ひとりの解釈があると思いますので、一概にこれが正しい!と言うつもりはありません。
国交省のガイドラインとは
正式名称は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。ガイドライン作成の背景については、国交省のHPに以下のように記載されていました。
要約すると ↓
ということですね。過去の判例による一般的な解釈をまとめたものだと説明されています。大前提として、ガイドラインはルールではない事がわかります。(重要)
クリーニング費用は家賃に含まれるべき?
クリーニング費用を特約で定めている契約が多いですが、「クリーニング費用はすでに家賃に含まれているから払わなくていい!」と、SNSでよく耳にします。
おそらく国交省HPの以下の文章を指していると思います。
↓要約すると
その中で、建物の価値減少の要因として以下4つが挙げられています。
ガイドラインで言及される「原状回復」が①〜④どれの復旧を指すのか曖昧にならないように、原状回復とは何かを定義した文章だったんですね。
まだ本題に入る前なので、ここで「クリーニング費用は家賃に含まれる!」と結論付けるのは少し早すぎるかも…!
また、ここで注意しておきたいのは、「原状回復義務を超えた修繕費用を借主に負担させてはならない。」とは書いてありません。
更に、ガイドラインにはこのような記載もあります。https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf ←ガイドラインへのリンク
このように、「原状回復義務を超えた修繕費用を負担させる特約も認められる。」と、ガイドラインでも説明しています。ただし、判例によると一定の要件を満たさなければ、その特約は無効になる(と裁判で判断される)ケースもあるそうです。その要件が以下3つとのこと。
クリーニング特約は「原状回復義務を超える修繕」ですから、特約が認められるには3つの要件を満たす必要ありそうです。
クリーニング特約が認められるための要件3つ
①特約の必要性があり、合理的理由が存在すること
クリーニング特約の合理的理由とは何でしょうか?
大家さん目線で、家賃の値付けから考えてみると理解しやすいかもしれません。
妥当っぽい家賃121,000円が求められました。やったね!
…はい、これは合理的ではありません。
49ヶ月以上暮らし続けた場合、入居者は余計な1,000円を延々と払い続けることになってしまいます。
実際の入居期間が事前にわからない以上、こうした不合理を防ぐためにクリーニング費用は賃料と別けるのが合理的とされているようです。
②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
クリーニング特約が合理的であることは分かりました。
では、2つ目の要件「原状回復義務を超えた修繕(経年変化・通常使用による損耗等の修繕)を負担することを認識」とは、具体的にはどのようなケースでしょうか?
↓ガイドラインにはこのように書かれていました。
以上が最高裁の判断とのこと。
経年変化・通常使用による損耗の修繕費用を負担させるには、その"範囲"が具体的に明記(あるいは口頭説明)・明確に合意されている必要があるそうです。
…範囲ってなんでしょう?これは人によって解釈が分かれそうですね。更に判例を見てみましょう!
それぞれの判例には、↓以下の相違点が見つかります。
これらの点などから総合的に判断されているようです。少なくとも、この3点を具体的に明記した特約であれば、裁判でも認められると言えそうですね。
③特約による義務負担の意思表示をしていること
3つめの「特約による義務負担の意思表示」は、要件②が記載された契約書へのサインで要件を満たすと言えそうです。
クリーニング特約の結論
以上から、クリーニング特約が有効とされる場合があることが分かりました。実際には個々の契約ごとに判断が別れると思いますので、ご自身の契約書をよく確認してもらうと良さそうです。
ちなみに、一般の居住用賃貸でクリーニング特約を定めていない契約は見たことがありません…。もし特約の記載がない場合は危険度MAXです。かなりいい加減な管理会社なのかもしれません。すべてのやり取りをメールで文字に残すなど、慎重に手続きを進めた方が良いです。
明確な結論を導きたかったところですが、このような結論になりました。ガイドラインに法的効力はありませんし、すでに締結されている契約が有効なものとも考えられます。
ただし、ガイドラインで知識武装すれば手強い人と思わせる程度の効果は期待できるかもしれません。
まとめ
ガイドラインに法的効力は有りませんが、きちんと理解して役立てられるといいですね!
もちろん、ボッタクリには断固反対でOKです。
特約に定めていないのに経年変化や通常損耗分まで請求されても負担する必要はありませんし、ご自身の過失による原状回復であっても不当に高額な請求であれば、強気の姿勢でいいと思います!
これから契約する人、これから退去する人、どなたかの参考になれば幸いです。
以上、「賃貸の退去時クリーニング費用は無料にできる?→国交省ガイドラインを引用して解説」でした。
追記
今更ながら自己紹介です。
都内でお部屋を借りる手続きサポートをしていて、COST/ (コストスラッシュ)というセルフ仲介型の不動産サービスを運営しています!
このnoteを見てくれた方のお役に立てれば嬉しいです。
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