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親脳ラプソディ

 私の両親は、転売目的で自分の脳みそをメルカリに売ってアホになった。

 それ以来2人は、互いの鼻くそをほじくり合ったり、家にある適当なCDを投げ合いながら、フクロテナガザルの様なやかましい声を荒らげる。私が呆れるのは言うまでもない。私はもうもはや、ノイローゼ寸前であった。
 そこで私は、ある決心をした。両親の節穴の如き頭に、脳みそを捩じ込もうではないか。

 私は早速メルカリで売られた脳みそを買った。自分の両親の脳を買ったのだ。よってバカ高い金を注ぎ込み、それは両親の銀行口座までに及んだが、全くもって心配する必要はない。なぜならそもそも両親には脳みそがなく、即ち己の財産が削れていることを知覚する能力はないからだ。
 1日経って、私は届いたダンボール箱を開いた。豚の様な色の、皺の濃い桃のようである。生臭い血の匂いだ。
 そうして、私は床に横たわり痙攣している両親の頭にアイスピックを次々と突き刺し、力ずくで穴を広げていく。そうして出来た穴の中に、先届いた脳みそを流し込んでいく。それはまるで、牛乳を注ぐ女の如く。
 作業はもう少しで終了だ。私は疲弊するばかりである。先程頭にねじ開けた穴を冷蔵庫の豚肉で塞いだ後、30分程度寝かせれば、全てが完了する。長い道のりであった。

 そうして時間は過ぎ、やがて両親は目を覚ました。母はこう言う。
「…ここは一体何処なんだ!?地球は平面ではなかったのか!?ということはこの世界は第五次元存在が創り出した虚構に過ぎないのか!?ぐはぁ!このままでは俺の脳が有毒電波によって破壊されてしまう!そうなればもはや癈人同然だ!この世界から解脱するためには神の言葉を信じねば!鬼鮫鱗坂塵剛力羅!!!!鬼鮫鱗坂塵剛力羅!!!!鬼鮫鱗坂塵剛力羅!!!!」
 どうも様子がおかしい。また、父は言う。
「…何だここは!?俺は先まで極楽浄土で全知全能の神ゴリバレオと共にこの穢土の陰謀について話し合っていたところだったぞ!まず前提として人工太陽は確実に存在し、地球を中心として惑星が公転しているということは事実だ!!この世界の酸素の9割がエリア56の化学実験によって汚染されていて、アメリカはインドと共同で人類絶滅計画を計画している!!!我々は世界平和の為に人類で立ち上がり、困難や恐怖に打ち勝つのだ!!!我がレオリゴ帝国万歳!!!!!シェリアゴルフ総統陛下万歳!!!!!」

 あちゃー。私は両親の脳みそを買い戻したかと思ったが、実際は別の人間の脳みそを買ってしまったらしい。しかも、結構ヤバいヤツの脳みそやないかい。
 うん。これじゃあ脳みそ無いよりタチがわりぃや。


pixivにもあるよ⤵︎ ︎


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