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『よくがんばりました。』喜多川泰

「そう、あくまでも心はある方向から光を当てたときにできる平面図でしかなくて、本体ではない。投影される影を見て、本体はこうだって想像されるけど、それでは正しく本体を認識することはできないでしょ」

pp197-198

同居人は教員だったころ、学級文庫に喜多川さんの本を置いていたという。

私はその話を聞くまで喜多川さんのことを知らなかった。

学級文庫は家に引き上げてきたから、家にはたくさん本があるけど、今にいたるまで読んだことがなかった。

そんなとき、近所で喜多川さんの講演会があるというので、参加することになった。

講演会に行くというのに著書を読んだことがないというのはいかがなものかと思って読んだ一冊。


教員の主人公が父が亡くなったことをきっかけに、縁が切れた故郷と父について知っていく話。

会わない時間も距離も飛び越えて、たとえ一方がこの世にいなかったとしても、人間は互いを知ることができるのだと思った。


喜多川さんの著書によく使われる(同居人が言っているだけかもしれない)、自己啓発小説とはどのようなものかと思っていたが、このようなものかと納得した。

いわゆるふつうの小説より、登場人物が著者を代弁している感じ。

強い教訓、メッセージがあって、それらをもとに話を肉付けしている感じ。


一冊読んだだけでは凄みがまだわからない。

先日注文した著書も届いたので、読んでみることにする。


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