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ある「本日の一部報道」の適時開示に、レトリックを学んだこと

よくあるリリースでも、少しおやっと思う表現にでくわす場合があります。
今年の頭、「本日の一部報道について」というよくある適時開示がLIXILよりリリースされました。以下はそれらの抜粋です。

2019 年 1 月 21 日付け日経ビジネスの記事の中で「LIXIL グループは昨年、MBO・本社移転・シンガポール上場という一連の計画を検討することを取締役会で決議している。」との記述がなされておりますが、当社取締役会においてはこれらにつきまして検討および決議を行った事実は一切ありません。
(株式会社LIXILグループ 2019年1月21日「本日の一部報道について」より抜粋)

おやっと思ったのは、二つのこと。

一つは、取締役会では検討していないけど会社の実務レベルで検討しているんだなということ。もう一つは取締役には情報が共有されているだろうということでした。つまり、結構真面目に検討しているのではないか、そう感じました。

もっともこういったことは、決定すれば当然表にでますが、頓挫するとなかなか表に出てきません。しかし、本件はアンサーとなる開示が半年後にでました。

株式会社LIXILグループ 2019年7月22日「今後の戦略的方向性についてのお知らせ」(同社HP掲載PDFへのリンク)より抜粋します。

 当社は、国内外の基幹事業への注力を通じて企業価値の向上に努めることが新体制における最重要事項である、との認識により、本日開催の取締役会において、「本社機能の国外移転、国内の証券取引所における上場廃止および海外の証券取引所における上場(以下、「本件」)」について、「現取締役・執行役の経営体制においては、これらを当社の経営戦略とする検討を行わないこと」を決議いたしましたので、お知らせいたします。

答えはでました。
では1月の適時開示はどういうことだ、となりますが、上記適時開示では以下のように続きます。

本件に関しましては、前代表執行役会長の潮田 洋一郎氏が、2017年10月1日から2018年9月30日に特命担当執行役として職務に従事した期間において、超長期間における企業価値向上のために、将来における最適な事業体制を模索する選択肢の一つとして検討しておりました。 その状況については、当時の取締役に共有しておりましたが、2019年1月21日付適時開示「本日の一部報道について」の通り、取締役会において本件を検討および決議を行った事実はございません。

否定できる部分にフォーカスして否定(記事では「取締役会で決議」とありました)する。それ以上のことは表記しない。
適時開示のレトリックのお手本の一つを垣間見ることができた一件でした。



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