【随想】ビルオーナーは店子を選べるか?#7−プラットフォーム事業者による審査・選別の限界(7/7)

 だとすれば、プラットフォーム事業者によるコンテンツの審査・選別の限界はどこにあるのだろうか。その答えは、独占禁止法の理屈が提供する。ガイドラインによれば、まず、プラットフォーム事業者が「市場において相対的に高いシェア」を有し、その事業者がコンテンツ配信業者と他のプラットフォーム事業者の取引を制限するために審査・選別基準を設定・適用・実施することで、「競争事業者の取引の機会を減少させ、又はコンテンツ提供市場における価格競争を阻害するおそれを生じさせる」場合、プラットフォーム事業者の行為は正当性を失うこととなる(第4-1-(2))。既に指摘した「App Store」の市場における地位を前提とすれば、この審査・選別行為が「コンテンツ配信業者と他のプラットフォーム事業者の取引の制限」に向けられている場合、独占禁止法上問題となり得る。また、ガイドラインは専らコンテンツ配信業者と他のシステム運用事業者の取引への影響に注目しているが、プラットフォーム事業者がその取引上の地位を利用し、コンテンツ配信業者に不当な不利益を課すようなかたちで審査・選別基準を設定し、適用し実施する場合も、ガイドラインでは触れられていないものの、独占禁止法上問題となる可能性があり注意を要する(2010年4月記)。

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