行政施策に民意を反映させるいくつかのルート#4−重複する「民意」の反映(4/4)

 今回の「訪問販売お断りステッカー」問題の条例改正の手続きは、政策立案における根本的な問題点を浮かび上がらせる。
 まず、審議会への諮問の仕方について。これは、事柄の性質上、行政の側にボールがある。今回は「条例改正の基本的方向性」が諮問内容であった。議論の対象を大雑把な内容に限定し、審議会に条例本体への関与を認めないやり方である。審議会の答申を受けて、審議会事務局(県の担当部局)による「条例改正の骨子」が示され、そののちに法規関連部署との調整をしながら条例改正の草案が作られる。審議会が条例に関わり合いを持てるのは、手続のなかでは、かなり川上・上流である。この傾向は、最近の政策立案のプロセスで目立っている。審議会が専門家の集まりであるとすれば、むしろ川上・上流ではなく、より専門性が問われる川下・下流において接点をもつべきではないかと思うが、行政の側は必ずしもそうした考えではないようだ。近時の審議会には、詳細な議論よりも常識の所在を確かめる議論が求められる。公募による市民代表などが加わったことも関係しているかもしれない。
 では、その後に待ち構えるパブリックコメントはどうであろうか。今回の条例改正にあっては、県担当部局による「条例改正の骨子」の公表に合わせて意見の徴収が行われた。結果は、すでに述べたように圧倒的に審議会の方向性を支持するものであった。しかし、その後の知事の判断と議会での反発を忖度して法規関連部署との調整の段階では、すでに目玉の「訪問販売お断りステッカー」に関する規定は姿を消していた。
 行政が都度介在するかたちで、幾重にも仕掛けられた民意の反映プロセスは、民意の名のもとに重複する手続を経ることで一定の方向性で政策が成形されていく。それを多様な民意の反映だとみるか、行政の、かたちを変えた専横と見るかは、皮肉な言い方だが、政策それ自身に賛成であるか、反対であるかによって決まるのではないか。民意とはそれほど曖昧なものなのかもしれない(2018年4月5日記)。

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