【随想】クレジットカード会社のビジネスモデル#3−(3/4)

 先月、クレジットカード会社のビジネスモデルをやや面倒な文字式で表現したが、そもそもクレジットカードの支払決済サービスは、一般消費者(カード会員)が、現金を持っていなくても、その場で商品・サービスを購入でき、カード加盟店は一般消費者が購入した商品・サービス等の代金を確実に受け取ることができるというものである。この仕組みは、ある取引において消費者が購入した商品・サービスの価格から、取引手数料(加盟店手数料)を差し引いた額がカード加盟店に支払われることで成り立っている。一般消費者にとっては、所有するカードの加盟店が多く存在していることでカードの利便性が高まり、カード加盟店は、現金払いのせいで一般消費者が商品・サービスの購入を思いとどまるというリスクを減らすことができ、また代金回収リスクも減少させることができる。カード会員にとっては、所有するカードがより多くの加盟店で広く受け入れられることでカードの利便性が高まり、カード加盟店にとっては、多くの一般消費者がカード会員となり、カードを利用してくれることで、より確実に利益を上げることができ、カードの便益も高まる。カード会員とカード加盟店とはこのような相互依存関係にあるといってよい。
 たとえば、有名なアメリカンエキスプレスのシステムは、とりわけカード会員とカード加盟店との相互依存性が大きいといわれている。というのも、同社は、自らのカード決済に直接関与する決済システムを構築し、カード会員とカード加盟店両方との直接的な関係を維持し、同社が加盟店手数料を直接設定する方式を採用しているからである。同社のシステムは、加盟店が負担する手数料がカード会員の特典の原資になることから、カード会員の側からすれば、同社が加盟店手数料を高くすれば高くするほど、よりよい特典が得られることになり、他方、カード加盟店が割高な手数料を支払ってでも同社のカード加盟店契約を維持するには、より多くの消費者が多額の商品・サービスを同社のカードを利用して購入してくれることが望ましい。
 だから、このシステムにあっては、クレジットカード会員の特典強化を図りつつ、カード加盟店の手数料の額を決定し、自社の収益を確保できるようバランスを考えていかなければならない。カード会員およびカード加盟店双方にとって、同社のクレジットカードが広範に使われることにより、満足度の高いカード特典の提供が受けられ、同社の収益性も高まることになるのである(2019年1月5日記)。

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