【随想】ビルオーナーは店子を選べるか?#1−スマートフォン・アプリ配信の現状(1/7)

 近年、RIM社製のBlackberryやApple社製のiPhoneの大ヒットにより、スマートフォンは携帯電話端末の新しいスタイルを確立した。スマートフォンは、それぞれ対応するアプリケーション・ソフトウェア(以下、アプリ)の搭載によって、容易に新たな機能を付加できることに大きな特徴があるが、これに搭載可能なアプリは、「App Store」(iPhone/iPad等Apple社製OS搭載端末向け)や「Android Market」(Google社製OS Android搭載端末向け)といったオンラインストアを通じてもっぱら配信が行われている。
 2010年4月時点において、「App Store」で提供されているiPhone/iPad向けアプリケーションの数は18万5000本、一方、「Android Market」では3万本弱のアプリが提供されている。現在、この2社の存在感は圧倒的であり、WindowsモバイルやBlackBerryといった他のスマートフォン向けアプリの本数を大きく引き離している。このように、最近では「App Store」や「Android Market」など、OSやスマートフォン端末の開発者が展開しているオンラインストアが、各々の携帯端末に対応するアプリの配信及び認証・課金・決済を一手に握り、コンテンツ流通のチャネル・リーダーとしての地歩を固めるに至っている。
 ここでは、「App Store」や「Android Market」といったオンラインストアが有するアプリの配信及び認証・課金・決済機能を「プラットフォーム」といい、かかる機能を有する事業者を「プラットフォーム事業者」と呼ぶことにするが、いま、このプラットフォーム事業者が、川上に位置するコンテンツ供給事業者(コンテンツ・プロバイダー)や川下の一般消費者に対して占める突出した地位、あるいは、その地位がもたらす取引上の力に注目が集まっている。殊に、電子書籍(e-book)の価格設定をめぐる出版社とプラットフォーム事業者との間で見られる一連のせめぎあいや、プラットフォーム事業者によるアプリの選別がしばしば取り沙汰されている。ここでは、主に米国において話題となった前者の問題はひとまず措き、まずは後者の議論を取り上げてみたい(2010年4月記)。

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