【随想】消費者問題としてのオレオレ詐欺!?

 数年来、ご縁もあってわたしが住む神奈川県の消費生活審議会の委員をしている。ちょうど5年に一度の「かながわ消費者施策推進指針」の改定時期にあたっており、この改定案の検討が行われているところである。先日の会合も、かなり固まりかけた骨格の提示と過日行われたパブリックコメントへの取り扱いについて事務局から報告がなされた。「消費者教育推進法」の制定後最初の改定ということもあって、消費者教育に対する県の新たな姿勢を示すということ、そして、相変わらず高い率を推移する高齢者被害への対策が、目玉ということになるらしい。
 パブリックコメントにはさまざまなものがあったようで、そのうち主要なものが、この指針案に反映できるものとできないものとに仕分けされ、示された。指針案に反映されなかった意見の一つに「オレオレ詐欺は消費者問題ではないので記述は削除すべき」というのがあった。思わず、「確かに」と頷いた。逆に、県が「オレオレ詐欺」を消費者問題として認識していることに驚き、違和感をもった。実態のない事業者や取引が存在するかのように偽装した「架空請求」ならまだしも、「オレオレ詐欺」は人間性の弱みにつけ込んだ犯罪には違いないが、商品やサービスに関する取引が介在せず、事業者との情報格差に起因する問題とはいえるのだろうか。
 気になったので、すこし調べてみると、こうした事件が頻発した当初、消費者問題であるとされ、各地の消費者センターがその膨大な事案の処理を任された経緯があるとのこと。こうした被害に対策を講ずることには賛成するし、「消費者問題」の定義論に陥るべきではないと思う。しかし、問題があるから対策を講じるべきと短絡的に考えず、その被害の原因が何にあるかを多面的に分析し、もっとも適合的な施策の体系の中で対策を講ずる必要があるのではないか。問題の本質を的確に捉えずに講ずる施策は、解決のポイントからも遠ざかってしまうと思うのである(2015年2月5日記)。

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