【随想】行政施策に民意を反映させるいくつかのルート#3−知事答弁に対するいくつかの反応(3/4)

 「訪問販売お断りステッカー」問題に対して示された知事の姿勢は、当然のことながら、さまざまな反応をおこすことになった。
 まず、神奈川県弁護士会の会長声明がある(「神奈川県消費生活条例の改正にかかる県知事答弁に対する会長声明」(2017年12月15日))。そのなかで、審議会における審議の経緯とパブリックコメントにふれ、今回の答弁が、「審議会の答申及びパブリックコメントにより多数を占めた県民意見と異なる方針を示すことについて、何ら具体的検証に基づく理由を示しておらず、県政に県民意見を反映するプロセスを無視した」と糾弾している。これにつづき、神奈川県消費者の会連絡会、神奈川県消費者団体連絡会および消費者会議かながわといった消費者団体からもあいついで意見書ないし抗議が提出されている(いずれも2017年12月20日付け)。
 これらはいずれも、審議会やパブリックコメントの軽視とこれまでの手続と異なるプロセスについて、また、内容についても、今回問題となっている規制のメリット・デメリットは、すでに審議会等において議論がしつくされていることなどが指摘されている。
 わたしも、審議会のメンバーとしてこれまでの議論の推移をみてきたから言えるのだが、これらの声明や意見、抗議で指摘されたことはいずれも事実であるといっていい。今回問題なっている規制についても、条例改正の目玉になると思っていたし、今回の県の知事の姿勢や県の説明には正直とても残念に思っているし、失望もしている。
 他方、今回の一連のプロセスを鳥瞰すると、いくつかの民意反映のフィルターがあるといってよい。第一に審議会、第二にパブリックコメント、第三に知事、第四に議会ということになろうか。各フィルターの間に県事務局が介在する。成案を得るにはそれぞれ立場や選出プロセスの異なる人々による多様な意見が反映されることになる。それ自体は、否定されるものではないと思う(2018年3月5日記)。

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