【随想】カード加盟店の手数料引下げの問題#4−(4/4)

 今年10月に予定されている消費税増税時のポイント還元策は、消費者がキャッシュレス決済を行った際、中小企業にあっては増税分を超える5%、大手企業のフランチャイズなどにあっては増税分と同等の2%をポイントとして還元するというものである。たとえばクレジットカード決済の場合、ポイントはカード会社を通じて消費者に提供されるが、その負担は政府からカード会社への補助というかたちをとる。
 2%の還元は増税の負担感を緩和し、景気の下支えをするためのもの。中小企業にかぎってさらに加わる3%分のポイントは、景気対策にとどまらず、中小企業の振興と経済のキャッシュレス化の促進のため。これらの政策目的を具体化するためのネックが、カード加盟店の決済手数料の高さであり、その引き下げ要請が問題の焦点となってている。たしかに、クレジットカード加盟店の決済手数料は、他の決済手段に比べ突出して高い。これは、決済ごとにネットワークの利用するための通信コストなどがかかるためであり、それゆえにクレジットカードは少額決済には向かないといわれる。また、カード会員にから加盟店手数料を高めに維持し、さまざまな特典をカード会員に提供しようとして採用するビジネスモデルの違いもあるかもしれない。
 カード会社に対する政府補助の条件は、カード加盟店の決済手数料を3.25%以下に引き下げること。政府によるビジネスモデルに対する介入は、これまで見てきたように、カード加盟店手数料とカード年会費の相互依存関係から、カード会費に少なからぬ影響を及ぼし、ひいてはクレジットカード会社のビジネスモデルの多様性を妨げることになるかもしれない。もちろん、カード会社に負担を強いる政策である以上、かれらの協力を得られるかもいまだ不確定要素である。いずれにしても、一定の政策目的を実現がカード会社次第ということは問題といわざるをえない。
 なお、最近の報道によれば、カード会社の協力を得るため、政府はポイント還元措置を恒久措置とせず、9ヶ月の時限措置とする方針を示している。当然ながら、決済手数料の引き下げ措置もこの期間のみとなり、終了後は、カード会社が手数料を再び引き上げられる可能性がある(2019年2月5日記)。

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