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春になったら◯◯します

「春になったら」というドラマを見ている。


自分自身の出産とほぼ同時期に母を亡くした身としては、この物語は他人事とは思えない…。幸せの絶頂のはずなのに、突然大切な人がいなくなる絶望。


お母さんを事故で亡くした後、父と娘ふたり、お互い支えあって生きてきた。初回はそんな、20年超の家族の時間と世界感が丁寧に描かれていた。

瞳(奈緒)は20代後半で、助産師の仕事に就いてしっかり自立していて、一人暮らししようと思えばいつでもできたろうに、そうせずにお父さん(木梨憲武)と2人で実家で暮らしてきたのは、やはりお父さんのことを大切に思ってるからなんだろうな、と思う。

お父さんの様子を見ていて視聴者の多くは、瞳と同じように、どこが病気なん?全然元気やん??と感じただろうけど、末期がんはあっという間に進行する。一瞬で悪化する。医者の告げる余命宣告はだいたい当たる。

現実は、ドラマでありがちな、優しくほほえんで「今までありがとう…」とそっとつぶやいて静かに息を引き取る、なんて美しい、感動的な最期ばかりではない。痛みが強くなってきたら、よりそう家族に気を違う余裕もなくなってくるし、それによって家族が傷つくこともある。痛みに耐えられなくなったら、もう二度と目覚めない強い麻酔薬を投与されて、会話もできなくなる。だから、お父さんが延命治療は受けない、長い時間苦しむくらいなら最後にやりたいことを存分に楽しんでスパッと旅立ちたい、という気持ちもよくわかる。瞳が「お父さん怖がりなくせに(どうして治療を受けないの?)」と問いかけるシーンはハラハラしてしまった。そんなん当たり前やろ、誰も死にたくないよ。その上で覚悟を決めて言っている。でも、瞳が少しでも長く生きてほしいと願う気持ちもまた、至極当然の感情で。どっちの気持ちもわかるなぁ、と初回から涙が止まらなかった。

医療ドラマじゃないからたぶんそこまで生々しくは描かないだろうけど、お別れまでの3ヶ月を、きれいにまとめすぎないでほしいな、と少し思う。ノリさんは役作りでこれから減量するのだろうか。
(私の体験をもとに書いているので、もちろん病状や年齢により個人差はあります)


私は本当に恥ずかしいことに、亡くなる直前の母とは距離が開くばかりで、お別れの言葉さえまともに言えないまま、さよならしてしまったので、お父さんと瞳は、3カ月間、自分をさらけ出して、向き合ってほしいと思う。

死んでからありがとうとか愛してるとか言っても遅いんや。


人生で一番幸せなことと、一番悲しいことが同時に起きた時、人はどんな表情になるのだろう。「その時」を迎えた時、奈緒さんとノリさんがどんなお芝居を見せてくれるのか、辛い気もするけど、とても楽しみ。


あっ!なんかめちゃくちゃ暗い感想文になっちゃったけど、ドラマ自体は、父と娘のテンポのよい会話や口喧嘩、絶妙におもしろくないカズマルくん(瞳の婚約者でお笑い芸人)のフリップ芸など、くすっと笑える要素もちりばめられていて、テーマはなかなか重いけど見やすくなっています。2話以降は、お互いの作った「やりたいことリスト」をもとに、あれやこれややる模様。また、緩和ケアの担当医が光石研、瞳が勤める助産院の婦長さんが小林聡美で、脇も実力俳優さんでがっちり固められています。気になる人は是非確かめてみてください。

たい焼き






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