(仮題)ギフト 第1節
「あれ……」
異変に気づいたのは、いつものようにショッピングサイトの欲しいものリストをチェックしているときだった。欲しいものがあるときはまずここに入れ、しばし寝かせるのだ。そうして、欲しいという気持ちが収まらなかったり、あるいはぐっと価格が下がったりしたら買うというわけだ。SNSにも公開しているので、日々の物欲が丸出しになってしまうが、もしかしたら誰かが贈ってくれるかもしれないという淡い期待があった。
「やっぱりなくなってる……」
そのサイトの欲しいものリストには、そのサイトで扱っていない商品でも「アイデア」としてメモしておける機能があった。少し前に、この機能を使ってみたくなって、悪ふざけで「ヤラせてくれる可愛い女の子」と書いてみたのだが、いつの間にか見当たらなくなっている。
「不適切な内容として削除でもされたかな」
エロゲやアダルトグッズも取り扱っているようなサイトのはずだが、ユーザーの投稿には厳しいのかも知れない。なんといってもアダルトグッズは金になるが、ユーザー投稿からは売り上げは立たない。
しかし「まあ仕方あるまい」と思って本来の作業――つまり、昨日近くのスーパーで購入したアイテムをリストから消す作業だ――に戻ろうとして、フィルターを切り替えたときだった。
「えっ、なんで」
購入済み商品だけを表示する設定に切り替えた途端、目の前に「ヤラせてくれる可愛い女の子」が表示されたのだ。
「買ってないぞ……」
一瞬、SNSの誰かがギフトとして購入するいたずらでもしたかと思ったが、そもそもアイデアのメモから直接購入はできないはずだ。一体何がどうなっているのか皆目見当もつかない。第一、モノを買うためのショッピングサイトで女の子を買うだなんてナンセンスもいいところだ。
――ピンポーン
反射的に「はーい」とよく通る声を玄関に向け、スタンプ印をひっ掴む。そのチャイムが鳴ったのが、宅配業者の配達など疾うに終わった22時過ぎだとも気づかずに。
果たして、扉を開けた僕を待ち受けていたのは一人の美少女であった。
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