“Is that the right answer?”
通訳は瞬時に適切な言葉を選んで声に出さなければいけない。
迷っている時間がないので、ともすると直訳調になってしまうことがある。
後で思い返すと、「なんであの時にこの言葉が出てこなかったのか」と悔やまれることがある。
コロナで対面の通訳をする機会はずいぶん減ったが、例えば先日、ある会議でちょっと緊迫したやりとりがあった。イギリス人の質問者が、「この状況についてあなたはどう思っているのか」と相手(日本人)に問いただしたのだ。
日本人がそつなく答えを返したところ、そのイギリス人がすぐにこう聞き直したのだ。
“Is that the right answer?”
私はとっさに、「それは本当に正しい答えでしょうか」と日本語に訳した。もちろん訳としては間違っていない。前後の状況も踏まえ、イギリス人の意図は相手の日本人に伝わったと思う。
しかし私の中では、何かしっくり来ていなかった。パズルのピースがピッタリはまっていないような、歯がゆい感じが残った。
ドンピシャの言葉がふっと沸いて出てきたのは、その日の夜、家に帰ってお風呂に入っているときだった。
“Is that the right answer?” 「あなたは本当にそう思っているのですか?」
そうだ!!これだ!!
あのちょっとシニカルなイギリス人が、かすかに笑みを浮かべいたずらっぽく尋ねたのは、これだったのだ!!
霧がサーっと晴れるようにスッキリしたのと同時に、なぜこの表現がとっさに出てこなかったのか悔やまれた。
通訳も場数なのだ。また頑張ろう。
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