社畜とはいうけれど、家畜に擬えるなら、美味しく育ててもらえたという感じもする。

会社勤めをするなんて、
小学生の僕は、中学生の僕は、高校生の僕は、いや大学生になっても
思っていなかった。

大学生活、程よく遊んで、程よく学んで、程よく悩んで
充実していたのだが、終わりを目前に、このパラダイスは続かないのだなと。

ミュージシャンになりたかった僕だが、
ミュージシャンになってなかった。
どこにでもいるモラトリアムを満喫する大学生。
アルバイトのお金は何に使ったのやらわからない。

学生という実に自由なぬるま湯で、
未来なんてどうにでもなると勘違いしていた。

ミュージシャンを目指してフリーターになる勇気はなかった。
言い換えればそこまで本気じゃなかった。
簡単に諦められる夢だった。

しかし、やりたいこともないし、
働くって何をするのかわからない。

とりあえず、人真似で就職活動をやってみるけれど、
志望理由ゼロで受けにいくもんだから、落ちる落ちる。

人づてで見つけた楽器屋さんの社員になった。
運が良いというか。ハイエナみたいな感じだったのか。

なんのビジョンもなくとりあえず勤めた。

やることよくわかってなくて入社したら、
仕事はセールスマンだった。音楽教室の勧誘とピアノの販売。
売れない。お客さんと関係を作るみたいな研修を受けるんだけれど。
教わったロールプレイみたいなことは起こらない。

手も足も口も出なかった。
口は出たんだけれど、通用しなかったばかりか、至るところでクレーム勃発。

そこで辞めてフリーターになるっていう勇気はなかったので、
しがみついた。

自分で道を切り拓いたことがなかった僕だから。
失敗だらけでも道がある方にしがみついた。

ちょっとずつ仕事が形になっていった。
少しだけ成果も上がった。

勉強ばっかりしていた頭でっかちが、
ちゃんと世の中のことを知って、自分の無力さを知って、
少しだけ自分で道を切り拓けるようにもなったのは、
会社っていう誰かが切り拓いた道を歩かせてもらったから。
そこで自分で切り拓くことにたくさん失敗させてもらったから。

社畜も悪くない。
守られた枠の中でちゃんと育てたと思うから。

多分、会社に入ったから、
人のこと、お金のこと、世間のこと分かった。
会社の中だから、叱ってもらえたし、助けてももらえた。
一人で生きる力なんてこれっぽっちもなかった僕が、
ちゃんと生きることを考えることができた。

世の中をナメていた大学生が、
少しでもまともな大人になれていたとしたら、
会社員でよかった。

挑戦するための土台がちゃんとできてきた。
助走は長かったけれど、
やっと会社の枠の外に挑戦しようって思える。

#会社員でよかったこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?