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「心の性別」に否定的なトランス当事者の話

そんなものは無い

こんにちは、藍です。藍って名乗り始めたばっかりなのですこし気恥ずかしいですね、へへ。

私は結論から話すタイプで、つまりタイトルと小見出しで主張の7割が終わたんですけど、でも残りの3割を大事にして生きているのが我々マイノリティだと思ってるので、どうかお付き合いください。


心の性別とは

心の性別、もう少し専門的に言うと性自認、つまり自分の性別について自分がどう思うか、ですが

ここで簡単な質問。男性の貴方は、女性だったことがありますか?女性の貴女は、男性だったことがありますか?

無いですよね。…無いですよね?

どちらか片方で生まれてきた私たちが、生まれてこなかった側の『心』、言い換えると脳の内側なんて、わかんないんですよね、わかるわけないんですよ。男の考え方、女の考え方、そんなの誰がなんの権限で決めるんですか?


さらに言えば、私は私の考え方しか知らないし、貴方は貴方の考え方しか知らない。私たちはどんなに客観的に物事を捉えようとしても、それは『限りなく客観的っぽい主観』でしかないんです。
生物にとっての等しい価値観なんて死くらいなもんですよ。


よって、事実として、

◆身体がオスかメスかの2択

◆心と呼ばれる、80億人分80億通りの価値観、思考回路

しか判断材料が無いわけです。
これが最近話題の多様性、性別のグラデーションとかいうやつの正体ですね。

ちなみに私の思想はかなり唯物論的(※1)らしく、人間とは生体とその生命活動による電気信号のシステムであると考えているので、「心は女性なの!」とか言われても、心なんてあるんですか~?ってスタンスです。ある!って思われる方は、是非私に教えてください、よくわかんなくて…。

※1【唯物論】  自然や物質、身体を世界が構成されるうえで根源的なものとみなし、そのような物質を最高原理とする認識論上の思想。

なので、ここから先、性自認というのは「思考様式」「性格」によるものだと定義して話を進めていきます。

『新版・出会いを求めて 現代美術の始源』,李禹煥,美術出版社,2000

男性らしさ、女性らしさ


簡単な思考実験をしてみましょう。以下の自己紹介をそれぞれ読んでください。


【A氏の自己紹介】

私はタルタルソースのついたエビフライが好きです。炭酸飲料はどうにも苦手です、喉がイガイガするので…


【B氏の自己紹介】

去年はけっこう釣りに行きましたね。冬の間は寒くて中々行けなかったんですが、その間にバイクにも興味が出てきて、お金貯めないとって感じです。


【C氏の自己紹介】

この前、バレンタインでチョコレートケーキ作ったんですけど、ちゃんと美味しく作れたのが本当にうれしくって!次はチーズケーキでもしてみようかな…


どうですか?Bさんがなんとなく男性っぽくて、Cが女性っぽくないですか?
そうなるように頑張って書いたんですけど…
ちなみに、全部わたしのことです。

上記の印象付け、別にいじわるでやってるわけではありません。釣り好きの人口は男女比4:1です。釣り好きが10人いたら8人が男性なので、釣り好きと聞いて男性だろうなと思っても、80%正解です。80%の正答率ならそれはもうほぼ当たると言っていいでしょう。え?ストーンエッジ?ちょっとよくわかんないです…
バレンタインも同様です。バレンタインは女性が男性に、ホワイトデーは男性から女性に、というのは至極一般的なイベントへのイメージだと思うので、これを『忌むべき偏見』などと呼ぶのは間違っていると思います。

どうですか、男性らしさ・女性らしさなんて、あくまで一般的なイメージと個々の事例を比較して得られているもの、というのは理解できたでしょうか。

ここで大事なのは、我々当事者にとっても同じだということです。

私は心が女性だからエビフライが好きなわけではないし、男性として生まれたからバイクに魅了されたわけでもなく、私がトランスジェンダーを名乗っているのは、ただ私という存在があり、それが周りと比較して、女性っぽいことが多いね、というだけです。


トランスは先天的か後天的か

って、考えたことありますか?

今の医学的見解では、トランスについて先天的・後天的の区別はありません。というか区別のしようがないんですね。


脳に電波をビビビッとして「おっ、この脳は女の子だね!」なんてわかるようになれば、多くのトランス問題も解決すると思います。
骨盤とかにはあるんですけどね、男性のもの、女性のもの。

でも、今の医学じゃまだできないんです。

だから、脳(心)から出力された言葉によって、問診で診断を下すしかないんです。

人は生まれた瞬間からエビフライが好きなのか、食生活による味覚の学習でエビフライが好きになるのか、誰にもわからないのと同じで、
トランスが生まれながらにトランスなのか、生活環境で後天的にトランスになったのか、だれにもわかりません。

わからないことは、考える必要が無いんです。
だってわからないんですから。


冗談ではなく、古くは1800年前のローマ帝国時代から「女性として振る舞う男性」が確かに存在し、1800年経った今になっても、性自認があるとか無いとか結論が出てない人類永遠の課題に、ここで「ある!」「無い!」って答え出るわけないじゃないですか!

出せたら本物の偉業ですよ。

でも、大事なのは、そんな昔から、確かに居たって事実があることです。
確かに珍しいし、マイノリティとか呼ばれるし、でもエイリアンじゃないんですよ。だってこの話題1800年以上前からずっとやってるんですよ!?
つまり、よくあること、普通の存在なんです。


トランスと向き合うようになった理由

なら、なんでわざわざトランスとか名乗るのか…

理由は簡単、困ったからです。困難に直面したからです。
幸せは失ってはじめて気づくと中川翔子も歌ってますけど、困難に直面してはじめて「あれ、なんでうまくいかないんだ」って自分を顧みるから、性自認と向き合う羽目になるんだと思っています。
何にも不自由してないのに「私ってトランスジェンダーかも…」とか言ってる人いないです。


具体的に


①スカートがずっと好きだったけど履けなくて困った

ベタなんですが。剣道をしていたので、合法的にスカートっぽい服が着れる~!ということで土日も家でよく着てました。
でも、姉のスカート履いて笑われたんですよね、親に。履いちゃダメなんだなぁって。高校になってSIDのライブに行くときにパンクスカート履けたの嬉しかったなぁ…
くるっと踵を返すときに遠心力でふわっと生地が広がるの、嫌いな人間いないと思うんですけどね?みんなもっと着ろ。

ちなみにこれは精神科側からも聞かれました。「姉妹いる?その服を借りたこととかある?」
精神科側から聞くってことは、つまりよくあるパターンってことですよね。
姉妹の有無とその服に惹かれるかに左右される、つまり後天的な要素が強いってことですかね?まぁどっちでもいいって話をしたのでどっちでもいいんですけど。


②子どもを産むことに憧れがあった

これは私の中で「自分って普通じゃないのかもしれない」と思うようになったきっかけエピソードがあって、小学5年生の頃、なんか防弾チョッキみたいなのを着て砂袋を詰めて、「妊婦さんの重たいお腹を体験しよう!」みたいな保健の授業があったんですけど、めちゃくちゃうらやましかったんですよね。
数人しか体験できなくて、周りの男子が茶化すから恥ずかしくて立候補できなくて、でも、してみたいなぁいいなぁって。あー泣きそう、


③まぁ色々と

なんじゃい!言えや!って言わないでくださいね。本当にいろいろあるんですけど、その色々を列挙しちゃうと、これを列挙するだけでジェンダークリニックで診断貰えちゃう!みたいなジェンダー悪用ハウツー記事になっちゃうので…。

私が性同一性障害の診断を受けたのは28歳ですが、それまではトランスとしての自覚が無かったの?と言われればそんなことはなく、生活とお金の目途がついたのでSRS(性器の切除)をするために公的な証拠が欲しかっただけです。

なんかいつも言ってるんですが、大事なのは「何をしたいか」です。


診断名は道具でしかない


私は、積極的に自らを「トランスジェンダー」だと名乗ることはしていません。だって私の友人たちは、男とか女とか関係なく「友達」だと言ってくれるので。

でも隠すこともしていません。トランスジェンダーに親が殺されたんですか?ってくらい「「嫌いっっ!!!」」って叫ぶ人はいますし、そういう人に自分の属性を隠して騙してやろうなんて思ってないし、交通事故は防げるのなら未然に防げたほうがいいですからね。

こんなこと書いたら炎上するかなぁ、でも、好きな髪型がしたかったり、名前を変えたり、身体にメスを入れる時に、トランスジェンダーって診断はめちゃくちゃ便利なんですよね。

私は心が女性だからそういう人生がしたいんではなくて、私がやりたい人生が、世間ではトランスジェンダーと呼ばれていた、って解釈が、最近はしっくりきていますね。

私は普通の男性じゃないし、ましてや女性でもないし、でも、貴方が思うトランスジェンダーとも、ちょっと違うかもしれない。私は私なので。

でも、それでいいんじゃないですかね。1度きりの人生なので、好きなように生きたらいいですよ。

我慢して我慢して、自己犠牲を繰り返して、
その果てに天国で「よく頑張りました」なんて女神さまが褒めてくれる補償なんて無いですからね。


もちろん他人にあんまり迷惑をかけない範囲でね。

あんまり、というのは、人は生きているだけで少なからず誰かに迷惑をかけて生きているので、完全に無害な人生というのは不可能です、このまえベガパンクが言ってました。
でもそれ以上に、自分を、そして誰かを幸せにできたらとってもいいですね。




余談
トランスを自称する方で、なんで女子トイレに入りたい方が度々話題になるのかは、私にもあんまりわかりません。
まぁスカートにヒール履いて男子トイレに入るのが憚られる気持ちはわかるけど、じゃあトランスの身分で女子トイレに入るのも憚られろよ…とか思いますけどね!ロールプレイがやりたいってことかな?知らんけど!


以上、ご清聴ありがとうございました。また次回があれば?


すぺしゃるさんくす
自分はなんでこんなに異端なんだ、つらい死にたい。だった私を、この考え方ができるようになるまで2年間ひたすら押し問答してくれたご主人さま

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