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fraternité(博愛・友愛)についてのメモ書き

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今回はfraternitéについて書きたいと思います。


⬛fraternité

ジャック・アタリの著作である『博愛:新たなユートピア』(※訳者による)の邦題は『反グローバリズム――新しいユートピアとしての博愛』となっています。

この著作のテーマは邦題から想像するような反グローバリズムを提唱したものではありませんし、グローバリズムを否定するものでもありません。その主題はむしろフランス語のタイトルどおり博愛を推奨するものとなっています。

『反グローバリズム』という著作のテーマである「博愛」という言葉は、ジャック・アタリの祖国フランスを絶対王政から共和政へと向かったフランス革命時のスローガンの一つであり、フランスの青・白・赤の三色旗、いわゆるトリコロールの赤は一般的にこの「博愛」を表現しているとされています。

「博愛」はフランス語のfraternitéの訳語であり、fraternitéは他に、「友愛」と訳されることも多いですが、日本語とフランス語との微妙なニュアンスの違いには注意すべきでしょう。

語源であるラテン語のfrāternitāsの語幹frāterは「兄弟」を意味し、fraternitéという言葉は語源学的な観点から見た場合、「広い」「友達」「愛」という意味は含んでいません。

英語のfraternityを語用論的に見た場合では、不可算名詞として使用されるときには、「友情の気持ち」や「支援する気持ち」という意味として用いられ、語源に見られるような「兄弟」という意味合いは「友情」という意味に転化され、通常は持たないと考えるべきでしょう。

fraternityにはもう一つ可算名詞として使用される場合があります。この場合は「同じ仕事や興味をもつ人々の集団」あるいはアメリカやカナダの大学で「男子学生が組織する社会組織」という意味があります。

女子学生の組織はsororityといい、語源は「兄弟」の代わりに「姉妹」となります。fraternityとsororityの典型的な組織名は主にギリシャ文字3文字で表されています。アメリカとカナダでは各大学のこれらの組織を統括するいくつかの全国的な協会や会議が形成されています。

fraternityには可算・不可算名詞、両方の使われ方があり、実際は墨子的な博愛という意味よりもずっと軽い意味で、可算名詞として使用される場合も、博愛というよりも「まるで兄弟であるかのような親しい仲間・集団・組織」という意味を核に持っています。

ただしジャック・アタリのようにユートピア主義的な意味でfraternitéという言葉を用いた場合には、墨子的な博愛という意味も少なからず入り込んではくるのでしょう。

フランス語のfraternitéや英語のfraternityと日本語の博愛や友愛の意味の不一致性を殊更批判的に取り上げるのは野暮な話であるとは言えますが、とはいえ、この両者の位置関係を意味論的、語用論的な地図に大まかに描くのは無意味なこととも言えないはずです。

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