見出し画像

ヴィム・ヴェンダース PERFECT DAYS

巨匠ヴィム・ヴェンダースの映画で2023年を締め括れて本当に良かった。

まずは4:3の画面にこの作品の美学を感じた。16:9の広がりを持った構図ではなく、ブラウン管テレビサイズのちょっとした窮屈さが主人公平山の質素な生活と絶妙にリンクしていた。

2時間通して繰り返される何気ない一日の積み重ね。一見退屈で眠くなりそうな題材ではあるが、チャップリンに匹敵する無口な役所広司の美しい所作や佇まいに一瞬たりとも目が離せない。喋っても喋らなくてもすべて成立させてしまう日本のナンバーワン&オンリーワン俳優。

見知らぬ人と文通のような○×ゲーム、カセットテープから流れる音楽、フィルムカメラのシャッター音のなんとも言えない心地良さ。デジタルと効率に支配された現在の私たちが原点に巻き戻される感覚。

そしてラストのニーナシモンのしゃがれた歌声をバックに、笑顔か泣き顔かわからない木漏れ日のような役所広司の顔は疑うことなく10のうち10だった。

それでは良いお年を。