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最近の記事

星野源のオールナイトニッポン in 深夜のファミリーレストラン

なんとも素敵な回だった。執筆やアルバムの構想など創作の入口として通っていたファミレスで愛を語るラジオ。星野源がはじめにオーダーした山盛りポテトというメニューを聞き一気に蘇る学生時代。 音楽を中心とした作品の話を気心知れた仲間とだらだら話す。ロックバンドの4枚目のアルバムは実験すべきだとか。深夜から朝方まで何時間もずっと。毎週当たり前に行われていたあの時間があったからこそ今の仕事でもアイデアがふつふつと湧いてくる。 緩やかな連帯を生み出していたファミレスとカラオケの思い出は

    • 青年団 S高原から

      ここ数年こまばアゴラ劇場に通いお弟子さん達の舞台を何度も観てきたが、今回の閉館に向けたサヨナラ公演で遂に師匠平田オリザの舞台を体験できた。そんな個人的な感動とは裏腹に至極淡々とした内容で叩きのめされるとは。 まずは客がぞろぞろと席に座る開演前から舞台上に俳優がいることが新鮮で、演劇がいつもの日常と何も変わらないことを宣言しているようだった。 そして療養所のラウンジに集まる人々の何ものでもない会話。特に大きな事件が起きるわけではないが常に死を予感させる不穏さが最後まで続く。

      • 藤井風 tiny desk concerts JAPAN

        ヒップホップやR&Bのアーティストが肩の力を抜きながら披露する極上パフォーマンスを見てきたから、初の日本版として歌とピアノを極めたこの男の登場はとてもワクワクした。 日常と地続きの余白たっぷりの演奏。机に花を飾るようにモノクロの日常に彩りを与えてくれる音楽。そして今週リリースしたばかりの新曲をこの場で披露するプレゼント。また一つ名曲が誕生した。 本人は相変わらずの立ち振る舞いで、景色がどんどん変わっていく。そうこうしているうちにコーチェラで平然と歌っている未来が当たり前に

        • 街裏ぴんくと村上春樹

          初めてR1グランプリを最初から最後まで観た気がする。そして街裏ぴんくの漫談と衝撃的な出会いを果たした。 寺内貫太郎のような見た目が一番のフェイク。とても聞きやすい語り口と声質がしっかり根を張りながら、話す内容はぶっ飛んだファンタジー。 乾いた文体でスイスイ読み進めていくうちに気付けば異世界に連れていかれる村上春樹のようだった。 夢はでっかく根は深く。地下で芸を極めればカラフルな娑婆が待っている。

        星野源のオールナイトニッポン in 深夜のファミリーレストラン

          清原惟 すべての夜を思いだす

          偶然と想像や春原さんのうたでも眩しいくらい街の光を映したカメラマン飯岡幸子。彼女の生み出す日差しを浴びたくて地元からはるか遠い映画館に足を運んだ。 多摩ニュータウンの朝から夜までの何気ない1日。各世代の女性3人が直接的に交わることはないが、私たち観客と今はいないあの人の視点を経て重なり響き合う。 火を絶やさないために次々に灯される手持ち花火が示すように、たくさんの家族がこの街にやって来てそしていつか去っていく。1日の出来事の中に人と街の記憶すべてが詰まっていた。 風に揺

          清原惟 すべての夜を思いだす

          オードリーのオールナイトニッポン

          東京ドームライブを成功させた翌週の通常回。各界から絶賛の嵐を巻き起こしみんなが注目する中、何も触れないことも少しだけ期待したが満を持してのアフタートークが聞けた。 春日の最初の登場シーンでの一悶着や大仁田厚をオマージュしすぎて漫才時の登場の歩き方がいつもと違くなってしまったり、アリーナではなくスタンド席にした日テレのメイクさんに会って怒られた話などあっという間の2時間だった。 M-1で初めて知った日から誰がこんな未来を予想できたのか。深夜ラジオという場所でひたすら自分たち

          オードリーのオールナイトニッポン

          オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム

          待ちに待ったオードリーの東京ドームライブ。どんなステージを魅せてくれるのか全く予想もつかずに本番を迎えた。 結果いつも通りのおともだちなオードリーで安心した。まる天井を見上げて背伸びをするのではなく、自分達の足元を掘り下げることでキラキラしたネタが溢れ出し、どんなに巨大な箱でも2人をとても近くに感じることができた。たけしも松本明子もフワちゃんも星野源もコナンも特別ではなくいつもの日常。 それにしても東京ドームでPOP VIRUSをまさか2回聴けるなんて。ギャンブル運は全く

          オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム

          三宅唱 夜明けのすべて

          是枝裕和、濱口竜介に続き地元のシネコンで新作を楽しみにできる日本人監督がまた1人増えて嬉しい。 明確なゴールが用意されているわけでもないが、母親が編んだ手袋のようなぬくもりが観終わった今でも確かに残っている。 社長の弟が遺したカセットテープが示すように演技を超えた役者達の声の響き重なり合いが実に心地良い。そして16mmフィルム越しに映る何でもない風景と光がこの作品の素晴らしさを決定付けている。 一人一人何かしらの傷や痛みがあるけれどそれに絶望するのではなく、時には誰かの

          三宅唱 夜明けのすべて

          宮藤官九郎 不適切にもほどがある!

          やっぱ金曜10時はクドカンだよね。長瀬智也がいなくなっても阿部サダヲがここにいる。 バカリズムがブラッシュアップライフで平成を振り返り、今度は宮藤官九郎が昭和をロックオン。バスや教室で当たり前にタバコを吸うシーンにはそうだったっけと素直に驚かされた。 コンプライアンスを逆手に取り視聴者と共犯関係を組む手法は水曜日のダウンダウンみたいだ。阿部サダヲが昭和の価値観で令和の息苦しさをどう打ち破っていくのか今後も楽しみ。 そして終盤に突然披露される胡散臭いミュージカルもクセにな

          宮藤官九郎 不適切にもほどがある!

          加藤拓也 ほつれる

          岸田國士戯曲賞の受賞経験もある劇作家 加藤拓也が手掛けた映画がAmazonプライムで配信されていた。 観終わった最初の感想としては、純度100%の演劇作品だった。冷め切った夫婦の萎え切らない会話劇と人の立たせ方が絶妙で、そこに美しく無駄のない背景と音楽が編み込まれている。 今まで加藤拓也の舞台に足を運ぶ機会はなかったが、この映画で彼の演劇の肝に触れることができてラッキー。対象が幅広い映画を名刺代わりにする劇作家が今後も増えていってほしい。 それにしてもここではないどこか

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          バカリズム 侵入者たちの晩餐

          ブラッシュアップライフの成功で紅白の審査員まで登り詰めたバカリズムの最新二時間ドラマ。憂鬱な仕事初めの前夜に鑑賞できてスッキリ眠れた。 前半はお得意のリアリズムな会話劇でまったり隙を作り、後半の掘っても掘ってもお宝が出てくるような怒涛の展開は流石というしかない。連ドラなのかニ時間ドラマなのか短編なのか、使える尺によって物語の書き方を変幻自在に変えながらちゃんとバカリズムらしさを残す。 濱口竜介監督の入門編がドライブマイカーと偶然と想像ならば、バカリズムはブラッシュアップラ

          バカリズム 侵入者たちの晩餐

          ヴィム・ヴェンダース PERFECT DAYS

          巨匠ヴィム・ヴェンダースの映画で2023年を締め括れて本当に良かった。 まずは4:3の画面にこの作品の美学を感じた。16:9の広がりを持った構図ではなく、ブラウン管テレビサイズのちょっとした窮屈さが主人公平山の質素な生活と絶妙にリンクしていた。 2時間通して繰り返される何気ない一日の積み重ね。一見退屈で眠くなりそうな題材ではあるが、チャップリンに匹敵する無口な役所広司の美しい所作や佇まいに一瞬たりとも目が離せない。喋っても喋らなくてもすべて成立させてしまう日本のナンバーワ

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          M-1グランプリ 2023

          出場者も審査員も観客もスポンサーも全員がこんなにも熱量を持って挑む番組が他にあるだろうか。漫才がブームではなく映画や音楽のように作品として語れば語られるほど漫才の文化が成熟する。このままいけば向こう10年は安泰だろう。 自分の中でのハイライトは、ファーストラウンドで他の審査員がさや香に高得点をつける中、一人だけ令和ロマンは超えていないと80点代をつける松本人志だった。 過去にジャルジャルのピンポンパンの漫才を一番評価していたように、技術よりもセンスが漫才の最上位としている

          M-1グランプリ 2023

          星野源 光の跡

          ついに解禁された星野源のニューシングルの一曲目。 先に告知されていたタイトルとジャケットの雰囲気から、本人も出演しているグランドメゾンのCM曲に違いないと密かに予想していたがまんまと空振り。 喜劇に続いて映画スパイファミリーのエンディングテーマなんて凄いよ凄すぎるよ源ちゃん。 そして初めて聴いた感想はSMAPみたいだった。それも姫ちゃんのリボンの主題歌を担当していた頃の曲たち。ミディアムテンポでどこまでも優しく青春を駆け抜けた90年代の記憶がキラキラと蘇ってくる。 年

          星野源 光の跡

          フランク・オーシャン Blonde

          年の瀬も迫り年間ベストアルバムの記事をあちこちで見かける今日この頃。 自分の中での年間ベストはこのアルバムがぶっちぎりだった。リリースは2016年とだいぶ前だけど。 前作channel orangeを夏に聴き倒し、寒さが染みる冬の今この作品の底知れなさに毎日驚嘆している。 レディオヘッドのKID Aを初めて聴いた時のような難解さとそれでもわかりたいと何度も再生することで耳がいつの間にか研ぎ澄まされている感覚。 ビートを排除しより一層切なさを帯びた歌声は疲れた身体を癒や

          フランク・オーシャン Blonde

          アルバム作りの大喜利化

          VaundyとKing Gnuの最新アルバムが立て続けにリリースされ、前者は沢山のシングル曲をオマケにして、後者は沢山のシングル曲を一枚のアルバムの中に違和感なく再構築させた。 昔はシングル曲を3枚リリースしてフルアルバムという流れが一般的だったが、サブスクでシングル曲を簡単に量産できる環境になった今アルバムの作り方が完全に変わってきている。 例の如く星野源もシングル曲が溜まっているから、Vaundy方式を取るのかKing Gnu方式を取るのか、はたまた新しいアイデアを見

          アルバム作りの大喜利化