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三宅唱 夜明けのすべて

是枝裕和、濱口竜介に続き地元のシネコンで新作を楽しみにできる日本人監督がまた1人増えて嬉しい。

明確なゴールが用意されているわけでもないが、母親が編んだ手袋のようなぬくもりが観終わった今でも確かに残っている。

社長の弟が遺したカセットテープが示すように演技を超えた役者達の声の響き重なり合いが実に心地良い。そして16mmフィルム越しに映る何でもない風景と光がこの作品の素晴らしさを決定付けている。

一人一人何かしらの傷や痛みがあるけれどそれに絶望するのではなく、時には誰かの助けを借りながら少しずつ前を向く。

ここではないと嘆いていた山添くんが周りの人達や日々の仕事を通じてやりがいを感じたり、藤沢さんが託した自転車から見える景色や吹き込む風は特別で最高ではないか。

人生は何が起こるかわからない。それでも今ここで生きていく。