見出し画像

体験談 | 台湾でお店を開業し閉店するまでの3年半を棚卸

はじめに

2021年4月末、2017年10月より続けていたお店(伝統工芸品/小売り)をクローズ致しました。
最初にお伝えいたしますが、撤退は経営難によるものでは無く、当初の役目を終え、次なるステップに向かうためです。とは言っても店舗経営は順風満帆だったわけでは無く、沢山の失敗をしました。
特殊な立地であること、またコロナ前であることから、再現性は無いかもしれませんが、今後の皆さんの台湾展開に対して少しでもお役に立てば幸いです。

店舗情報
店舗名称:能作台北マリオットホテル(台北市中山區樂群二路199號)
営業時間:11時から22時(年中無休)
店舗面積:20坪
店舗立地:台北中心部から少し離れた富裕層エリアに立地するホテル内  
主な客層:近隣の富裕層、ホテル宿泊客、ホテルの利用者(披露宴や食事)
平均来店客数:平日5名程度、休日10名程度
平均客単価:1万5千円
売り上げ実績
2017年:約250万円(3カ月)
2018年:約700万円
2019年:約650万円
2020年:約900万円
2021年:約550万円(4カ月)

この売上でどうやって運営をしていたかと思われるかもしれませんが、実は単なる店舗だけでは無く、物流の拠点の機能も有しており、ECサイトの受注~出荷、B向けの取引先の出荷を担うことで不足分をカバーしていました。

それにより「運営費用」はほぼトントンでこの3年半を過ごすことが出来ました。ただし、この中には減価償却費用、異文化対応コスト(海外ならではのイレギュラーに発生する諸経費)や私(日本人管理者)の費用は入っていません。

それでは運営面における失敗談を3つ共有いたします。

1.逃し続けた大口ギフト
当初立てた目標で唯一達成できなかった項目がこちら。法人の記念品や結婚式の引き出物などのギフト市場へ入り込むこと。
A) 中々超えられない文化の違い
台湾は結婚式の引き出物に相当する品の価格帯や商材が日本とは異なります。台湾の披露宴は日本と比較すると参加者自体が多く、安価なお菓子類を配ることが一般的で、またどちらかと言えば大きくてわかりやすいものが好まれる傾向にもあり、このホテルで挙式/披露宴を行う方々でも、中々検討のテーブルにも上げてもらえない、という状態でした。
B)納期と価格
大口のギフト/記念品の問い合わせを頂いても、こちらに与えられる時間はあまり長くありません。納期は2週間から最長で1カ月。この期間には日本での製造~台湾輸入の全ての期間が含まれており、また並行して割引交渉も行われ、決して簡単ではありません。
前提として台湾に十分なストックを確保しておかないと、中々お客様のご要望には応えられません。その上で、どこまでの割引やサービスをするかはセンスが問われます。

2.ホテルとの関係
A) 大家と借主の以上でも以下でも無い
日本の場合「施設とテナントが一緒に成長する」「百貨店外商による売り上げ」等が、施設によってはあるかもしれませんが、台湾では良くも悪くも「不動産業」です。
実は出店を決めた際「ホテル側がホテルのお客様へのPR(外販や結婚式の引き出物提案など)」という下心を持っていましたが、今思うと実に浅はかな考えでした。実際は大家と借主の関係に完結されます。
いえ、もしかするとホテル側との関係を強化し、そういったことができたのかもしれません。もし出来たとしたならば完全に私の力不足でした。

B)議論の無い契約更新はありません
契約更新は実に緊張感を伴います。結論からですが、入居時の契約内容は更新時に高確率で変更となります。
台湾の場合入居時は比較的テナントにとって合理的な条件での家賃交渉は可能ですが、一方で契約期間は1年や2年の短期間となることが多いです。その為、迎えた契約更新時には撤退をするか、施設側の条件を受け入れるかの選択を迫られます。
今回、元々の家賃条件が優遇されていたのも事実ですが、契約更新時、家賃は実質+80%UPとなりました。

3.固定客やファンの獲得に出遅れ
失敗では無く、勉強。これが一番大きいかもしれません。
日本と台湾という違いは無く、最後はこの一言に尽きると思います。
結局「ホテル側にお客様を運んできもらおう」という甘さが、大口ギフトの取りこぼし、顧客の広がりの限界、を生み出した本質的な原因だと思います。
開業2年間はリピーター獲得への施策が弱かったため、リピーター作りに苦戦して、日々の営業は「運を天に任せる」という状態でした。その為、日々の売り上げの落差が非常に大きかったのも特徴です。(例:売り上げ0が続き、ある日突然10万円の売り上げが計上されるなど)
お客様への理解(属性から好み・要望など)、日々のプロモーション活動、個々のお客様への特別なサービスなどお店として、当たり前のこと丁寧にお客様に提供できていれば、今よりもより良い状態で第二章のスタートが出来たかもしれません。


個人的に大変だった点
1.年中無休に長い営業時間
日本と比べると、台湾の商業施設は開店は11時からと遅いのですが、閉店は大体22時と夜型で、営業時間が11時間と長いです。
小売業なので正直、夜8時以降の売り上げがほとんど見込めない中、営業しなければいけないという固定費の負担、何より僕自身の心が休まりませんでした。どうしても、まだ働いているスタッフが横切ってしまい、大袈裟ですが、どこで何をしていても、お店のことが気になっていました。
また正月くらいは店舗のスタッフにきちんとした休暇を取ってほしくて、毎年春節は自らワンオペ出勤していました。春節は日本はお休みじゃないので、台湾で一人バタバタしていました。

2.守れなかった労働基準法
台湾では4時間以上の勤務で30分、8時間以上の勤務で1時間、の休憩を取得させなければいけませんが、シフトの兼ね合い/人権費の兼ね合いで取得困難なことも多々ありました。当時のスタッフとは労使同意の上で、運用をしておりましたが、改めて振り返ると反省すべき事項です。

お店って本当に一人ではできなくて、外部の方やスタッフなど多くの方の協力があって初めて成り立つものです。皆さんの想いが形になった場所、もっともっと大切にしていきたいと改めて感じました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?