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伝説のベストセラー 野口悠紀雄『超勉強法』

「独学でスキルを身につけたいな…でもどうやって独学したらいいのかわからない」

今の時代、このような状態に囚われている方は少なくないと思います。

独学の厄介なところは、方法次第で成果が変わること。

正しい方法で独学できる人は勝手に伸びていく。しかし、間違った方法にハマってしまうと努力が報われないんです。


じゃあ正しい方法を実践している人は、どうやってそれを見つけることができたのか?

実は「運が良かった」というのが最大の要因なのですが(本人はその運を無自覚なことが多い)、意識的に実践できることもあります。

それが、独学に成功した先人の経験を参考にするという方法。

独学をテーマにした良書はたくさんあるので、それらを参考にして、共通の要素をあぶり出し、真似していきます。


そのような優れた本のひとつが野口悠紀雄の『超勉強法』

1995年に発売された本で、数百万部のベストセラーになったもの。

久々に読み返してみたら、やっぱり名著でした。なんかやる気が湧いてくる。


本書に関しては批判もあります。「対象読者の知的レベルが高すぎないか」というもの。

確かにやたらとレベルの高いものいいは目につきます。

でも根本にある方向性は間違っていないので、だれが読んでも有益です。どっちを向けばいいのかということはわかるので、それだけで価値があるんです。


すべての勉強に共通する三大原則

『超勉強法』はまず、すべての勉強に共通する3大原則として、以下の3つを挙げます。

・面白いことを勉強せよ
・全体から理解せよ
・8割理解したら先に進め

第一に「面白いことを勉強せよ」

勉強は面白くなくちゃいけないというのが本書のスタンス。

教材は自分が興味をもてるものを選ぶ。教材が指定されている場合は、せめてその教材を学ぶ方法を面白いものに変える。

知識がつけば興味の幅も増えていく。勉強をするほど、面白いと思える対象は増えていく。


第二に「全体から理解せよ」

部分を積み上げて理解していくのではなく、全体から理解する。まず全体像をつかめば、個々の要素でどれが重要かもわかる。

すると重要な点に集中した効率的学習も可能になる。

勉強の得意な生徒は、こうして枝葉を捨象して幹に集中する方法を知っている。逆に勉強の苦手な生徒はこの方法を知らない。

ちなみに教師の役割のひとつは、この枝葉と幹を区別して教えてあげることにあるとされます(もう一つは好奇心をかきたててあげること)。


第三に「8割理解したら先に進め」

これは完璧主義からの脱却です。

残りの2割はむずかしい。しかも努力の効果が薄くなっていく。たとえば70点を80点に上げるよりも、80点を90点に上げるほうがずっと時間とエネルギーがかかる。

だから80点で満足してさっさと次に向かうべきだと。

そして後から立ち戻れば、残りの2割を理解することはだいぶ易しくなっている。


英語の超勉強法

本書の英語学習法はシンプルかつ強烈です。

教科書を丸暗記せよ

…というのがそれ。

従来の学習法を分解モデルと読んで批判します。これは第二言語習得論でいうところの自動化モデルというやつ。

それに対して教科書の丸暗記は、大量インプットを重視するインプットモデルの一環と見なすことができます。

自動化モデルからインプットモデルへ移行すべきというのは第二言語習得論でも言われていること。

野口悠紀雄は先見の明があったといえるでしょう。


国語の超勉強法

国語はすべての勉強の土台になります。読解力や表現力が上がれば、他の教科も自然と実力が伸びていく。

だから国語の勉強はすごく大事。

でも具体的になにを勉強すればいいのか?

読む技術と書く技術を習得せよ、というのが本書の答え。

そのためには字数を意識するのが大事だと著者は言っています。

文章のサイズは以下の4つに分けられます。

・細胞レベル150字
・短文レベル1500字
・長文レベル15000字
・単行本レベル150000字

これらの分量によって内容が変わってくる、と。内容で分量が変わるのではなく、分量が内容を決めます

そして、それぞれの分量ごとに、文章には固有の構造ができてきます。

この論理構造を意識することが、書くことと読むことの奥義であると、本書は解説します。


数学の超勉強法

数学についても従来の教え方が批判されています。

「基礎からひとつひとつ積み上げないと数学はできるようにならない」という考え方がそれ。

むしろ著者は「基礎は無視してとりあえず目の前の問題を解けるようになればいい」と主張します。これをパラシュート勉強法と呼びます。

なぜ基礎は無視すべきなのか?

・難しいから
・つまらないから
・全体のなかで位置関係をつかめないから

先に当面の問題に取り組んでしまえば、後から基礎もわかるようになります。

ビジネスマンのやり直し数学についても、「基礎からひとつひとつ復習する」というやり方をしないように注意されています。

むしろ自分の仕事にい必要な分野だけを見て、それを解けるようにしてしまうのが最善なのだと。

確かにこのトラップは僕も何度もハマったことがあります。

本書では百科事典を用いた数学勉強法がおすすめされています。現在ではウェブサイトやChatGPTが無料で使えるので、本書の推奨するパラシュート勉強法はより効果的になっているといえるでしょう。

また受験の数学については、それが暗記科目だと指摘されています。

世界的な数学者であるS助教授の「受験数学には創造力どころか分析力も必要ない、パターンを暗記して当てはめればいい」という発言の引用が印象的。

正しい方法で勉強していれば、だれにでもできるのは数学で、難しいのはむしろ国語だとも。


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