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ORESAMA『WELCOME TO WONDERLAND Vol. 1』:音と光のワンダーランドで交差する歌声と身体表現

ORESAMAぽん/小島英也)の映像作品『WELCOME TO WONDERLAND Vol. 1』がリリースされました。2018年9月のライブ〈ワンダーランドへようこそ ~in AKASAKA BLITZ~〉が収録されています。MINICOがDJとコーラス、三浦光義(PARADE PARADE)がベースでサポートし、さらにELEVENPLAYから二人が参加しました。セット・リストは主に二枚のアルバム『oresama』と『Hi-Fi POPS』の曲で構成され、ライブの約一ヶ月前にリリースしたシングル「ホトハシル」の曲も演奏されました。

映像作品を観るとライブにおける感動が蘇り、ライブのときには情報処理が追いつかなかった部分を含めて新たな魅力に気づくことができます。例えば、「ワンダードライブ」「Trip Trip Trip」で重なるギターの音は、シングルとは違う印象を受けます。シングルではシンセサイザーの音が前面に出ている印象を受けたものですが、本作で聴くと、前後が入れ替わってギターが前に出ているように感じられます。この旋律がとても心地好く、胸に響き心にしみます。

フロントの三人がステップを踏み、ステージが真っ赤な光に染まる「cute cute」。イントロをはじめ随所でMONICOの披露するスクラッチが、曲に新たな生命を吹き込みます。サックスの音が存在感を放ち、自然と身体が動くファンキーな曲ですが、ライブではスクラッチが加わることで厚みを増し、ダンス・ミュージックらしさが一層上がります。特にスクラッチを含むエンディングは、ずっと聴いていたいと会場で思ったことを記憶しています。なお、このMONICOスクラッチは「Listen to my heart」や「ホトハシル」でも聴くことができます。

「ワンダードライブ」以降のミュージック・ビデオではELEVENPLAYとの関わりがあり、リリースのたびに関係を強めてきました。「ワンダードライブ」では、ぽんの振り付けをNONが担当し、以降すべてのミュージック・ビデオの振り付けを担当しています。次作「Trip Trip Trip」ではMARUYUの二人が出演し、ぽんの両サイドでパフォーマンスを披露しています。このスタイルは「流星ダンスフロア」と「Hi-Fi TRAIN」と続き、「ホトハシル」では再びNONによる振り付けのみとなりました。

ミュージック・ビデオに収まっていた世界が、ついにライブという外界に飛び出します。このライブでMARUとYUがステージに立ち、圧倒的な存在感を放つパフォーマンスを披露しました。「流星ダンスフロア」と「Hi-Fi TRAIN」のビデオに映るパフォーマンスはごく一部なので、ライブでは完全版を観ることができ、貴重な体験となりました。「ホトハシル」のビデオでは二人が参加していないどころか、ぽんのリップシンクすら少なく、ライブこそが振り付けの素晴らしさを堪能できる機会といってもいいでしょう。

「ホトハシル」における振り付けの主な特徴は「腕の動きや角度が直線的かつ鋭角的」ということだと思います。両腕や手首など、すべての動きに勢いがあるだけではなく、触れたら切れそうなほどの鋭さがあります。指先の動きまで作り込まれているのがELEVENPLAYの特徴ですが、この曲ではそれがよく分かると思います。

動かない表情と、鋭く動く身体。二人の表情は仮面のように固定され、テクニカルかつシャープな動きを強調しています。そして、印象的なシーンは曲の最後にも訪れます。両腕が一本の斜線を描く直前に、手と手の間から覗いた目。光が捉えたその目のきらめきは、記憶に刻み込まれました。

対して、「Hi-Fi TRAIN」では比較的ソフトな印象を受けます。全体的に軽やかな手や腕の運び、跳ねる感じがする振り付けであり、直線的な動きすら柔らかさを含んでいる。身体のコントロールとは、止めるだけではなく、どのていど流すのかということも含まれているのでしょう。曲にマッチするこの柔らかさに、観ていて心地好さを感じます。

また、円を描きながら前に進むというイメージも浮かびます。曲が宇宙を走る列車をモチーフにしているためか、ドアが開いてさまざまな乗客を迎え入れる感じがダンスにも表われている気がします。いろいろな乗客を乗せて、宇宙を駆け巡るファンタジック・トレイン。特に ♪宇宙よ踊れ♪ のフレーズに合わせた動きが好きですね。

「流星ダンスフロア」はライブ本編の最後に披露されました。振り付けの大きな特徴は夜空に輝く光をイメージしたところだと思います。サビに入り、顔の前で両手を広げるといくつもの星が瞬き、人差し指で大きな弧を描くと流れ星が姿を見せます。さらに曲がディスコ・ソングをイメージしており、その雰囲気を振り付けにも感じることができます。

曲は終盤になるとダイナミックに展開して、打ち上げ花火のような開放感を味わえます。ぽんのメンバー紹介に呼応してベース、DJ、ギターの順にソロを披露すると、音と光が弾け、MARUとYUの二人もまたパワフルに動きます。そして、クライマックスを迎える最後のサビでも星は輝き、観客が手を挙げればそれだけ瞬く星が増えて、ライブの締め括りに花を添えました。


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