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3年後、LAにて。

 あまりにもいつも通りのまま帰宅して、疲れのあまりコンタクトレンズも外さずに寝る。朝起きて世界はそのまま進んでいて、新幹線も動いていて、大好きな街を離れ東京駅の看板が目に飛び込む。

 学生時代の大半を過ごした人たちとの学生時代最後の旅行だと言うから、湿っぽい話もたくさんして、本当のことも話そうと思っていた。けど、いつも通り、美味しいものを美味しいと叫び、たくさんのお酒に浸り、くだらない話で笑い、まあちょっとひとり泣いちゃったりもして、大好きで仕方ない歌をみんなで歌う。通常回だった。やっぱり最高だった。通常回が1番面白い。ゲストがいなくても、こんなに面白いのに、春の改変は突破できずに、特番になる。視聴率は良かったのに、もともとこの番組は、長くて4年で一旦区切りの予定だったんです、だってさ。笑えるぜ。

 ハルカミライの「アストロビスタ」って曲、俺らが大好きだった曲。アストロビスタってスペイン語で「さよなら、またね」って意味なんだってさ。この曲と出会って4年、知らなかった。それを含め、この歌の最後

「わかるかい?本当に?ありがとね」

 が今になってとてつもなく突き刺さる。

 お別れは唐突にやってくる。確実に少しの間おさらばしちゃうのがわかっていて、なのに、それに抗う方法がわからなくて。俺は不器用だからひとりひとりの手を握ることしかできなかった。口すら開けなかった。何かを言い出したら、全てが溢れてしまいそうで。そしたらその手から涙が出ていた。不思議な感覚だったけど、あれは間違いなく涙で。あの感覚は体が一生忘れることがないんだろうな。

 "会えなくて寂しい"が"会えて嬉しい"になっていく寂しさ。これが「しばしのお別れ」ってやつなのか。いやになるね、ほんとに。

 俺らのリーダー曰く、次の予定は3年後、ロサンゼルス編らしい。どのロサンゼルスなんだろう。どこでもいい。アメリカのロサンゼルスでもいい。日本のロサンゼルスでもいい。西宮のロサンゼルスでもいい。どこかしらにとってのロサンゼルスに集まることにしよう。じゃあ、本当のことを話すのは3年ぐらいは後にするよ。それまでは生きておかなくちゃ。生きていてね。それまで毎月くらい会っちゃうかも。電話とかは何日も連続で繋いだりしちゃったりして。みんな楽しく生きるの得意だから大丈夫だ。あっ、ロサンゼルスの予定も立てなきゃ。だって俺らにはまだ3年もあるんだぜ。






 世界が歪んでしまって、この時空が止まったら、2020年11月15日のあの音楽スタジオへ行く。みんなと出会うために。俺がみんなを忘れていても、みんなが俺を忘れていても大丈夫。どうせ同じように笑い合ってるからさ。

 本当に、ありがとうね。


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