解説

解説-NGT48「蒸発した水分」

■新鮮さ+48らしさが同居している曲

こんにちは!松岡(@iamkisimen)です

僕が、某業務用カラオケ制作の仕事をしていた時
「何コレめっちゃ新鮮+48グループらしさも有る!!」
と衝撃を受けた曲がコレ。

何故、新鮮さを感じたのか?
(例の話題、には一切触れずに)
分かりやすく楽曲解説してみようと思います!

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NGT48「蒸発した水分」
リリース:2018年4月11日
作詞:秋元康
作曲:MS play beats
info:NGT48の3作目のシングル「春はどこから来るのか?」カップリング曲。
柏木由紀がセンターを務めるNGT48の中でも歌唱力に定評のあるメンバー
「NGT48初代うた選抜」が歌唱。

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■3連符フロウの採用(Aメロ/大サビのリズム)

この曲の新鮮さの理由は
ズバリ「3連符フロウ」です。

以下の3箇所で確認できます。
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1.1番Aメロ(0:32~)「風が吹いて枝が揺れて~」
2.2番Aメロ(2:02~)「授業サボり 学校から~」
3.大サビ(3:06~)「ずっと晴れているわけじゃないんだよ~」


3連符のフロウは
トラップ以降のHiphop/R&Bなどで
非常にポピュラーになった歌のリズム。


「拍を細かく割りながら歌う」為、スピード感を出したり
「拍の割り方(訛り方)」によっては、セクシーに
聴かせることができる、リズムの取り方です。

現在はHiphop, R&Bは勿論、広く浸透したリズムですが
48グループがここまで大胆に取り入れるのは
(僕は)初めて聞いたので、新鮮だしビックリしました
「マジか、ここまでやっちゃうんだ。。。」
と思わず声漏らしました
(。。。ついでにちょっと漏らしました。)

以下、リリース時の
作曲者さんのツイート引用します

■トラップ(Trap)とは?

この「トラップ以降の3連フロウ」は
近年のPopular Musicの中で非常に重要なので
もう少し紹介します。

→トラップ(Trap)
ハードコア・ヒップホップの1つ。
重低音を強調したビートに、特有のハイハットの連続音や、
派手な電子音を加える中毒性の高いスタイルが一般的。
トラップとは「コカイン密売所」を表すスラング。
アトランタがこのジャンルの発祥地とされている

では、現在その「フロウ」は
どんな音楽に影響を与えているのでしょうか?


■3連フロウが確認できる音楽


・BLACKPINK - 뚜두뚜두 (DDU-DU DDU-DU) (2018)
(0:38~をcheck)
※韓国のガールズグループ。2016年デビュー。


・IAMDDB - Shade(2017)
(0:08~をcheck)
※UKマンチェスターが拠点。
Jazz、Soul、R&B、Hip Hop、Trapといった音楽に影響を受けたスタイルを、
彼女自ら「Urban Jazz」と定義するボーカリスト。


■48らしさ(ドラムと生楽器中心のアレンジ)

次に、48らしさの理由です。

まず、
ドラムはBPM122~124程度、
Popsらしい素直なビート。

(48グループ的にはそれほど早くない印象)

またアレンジも
ストリングスや生ピアノが主役の
ナチュラルな質感
の為
「48らしさ」をちゃんと提示できています。

音楽では、文脈、つまり
「今まで発表した作品や、キャラクター性、
プレゼンした価値観の流れを踏まえながら、
段階的に新しさを提示する。」

ことが求められます。
この曲は新鮮さ+48らしさを同時に提示できた
成功例
だと思います。

押しつけがましくないリアルで前向きな応援歌

次に、歌詞の構造を見ると
・A/Bメロ:現実逃避しようとする
・サビ/大サビ:悲しみと向き合い、自浄する主人公

という読み方が出来ます。
単純な「2項対立」ではなく
時間の経過を経て、徐々に前向きさを取り戻す
主人公の心情の変化が描写
されています。

→悲しい出来事
→現実から目を逸らしたい
→傷付かない守られた場所へ移動
→涙が流れる
→(時間の経過があり自然と)涙が乾き笑顔を思い出す。

という流れです

ここでは
「決して押しつけがましくない、リアリティのある前向きさ」
が表現されています。

「頑張れ!負けるな!」
「悲しいこと忘れて前向きになれ!」

と応援されても

本当に体力も精神力もギリギリのニンゲンからしたら
「うっさい!ほっとけ!」
「もう頑張っとるわ!」

となりますよね

この曲は
「傷ついた主人公が
逃避(休息)を挟んで、
我慢せず涙を流し
徐々に前向きさを取り戻していく」タイプの応援歌


僕は、あいみょん、星野源などにも同様の
時代を掴む作詞センスを感じるのですが

閉塞感のある今の日本に
とてもフィットする歌詞
だと思いました。

とても重要だと思うので
以下、歌詞を引用、分類していきます

※現実逃避シーン
1A「風が吹いて~そっと瞳閉じれば どこか遠い彼方へ
意識だけが動いて旅が始まる」
「せめて願い叶えて 鳥になりたい」
1B「悲しみに出会ったら~風景の中に溶け込む努力して 無になるんだ」
2A「授業サボり 学校から逃げて来た午後」
2B「ちっぽけな自分が 地球の片隅で 影になる」

※悲しみと向き合うシーン
1サビ「涙を蒸発させよう~濡れたその頬 乾く頃 笑顔を思い出してる
無理に拭うよりも少し待ってればいい~」
2サビ「時間は蒸発させない 人生を無駄にできないよ
早く気持ちを切り替えて 水分補給しなくちゃね」
大サビ「ずっと晴れているわけじゃない~
微笑んでばかりじゃ優しくなれない~
時には泣くことも必要だ」
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2サビ終わりで
「早く気持ちを切り替えて 水分補給しなくちゃね」
ってオチつけれるのスゴイ

タイトルを単純に「涙」ではなく
「蒸発した水分」とヒネった所もスゴイ
です。
(※タイトルだけ聞くと「何の話?」と不思議な印象だけど
実際聞くと、丁寧に練り上げられた応援歌である、
というギャップが良い◎)

曲の展開に合わせて、物語が進行し、
主人公を映すカメラが動いていく点にも
秋元作品らしさ感じます。

■効果的な転調

最後に、コードについて。

この曲では
・A/Bメロ:Key=F
・サビ/大サビ:Key=G

と転調しています。

これは先に書いた
歌詞の場面の構造とシンクロしているため
メロディと歌詞が非常に効果的に響く

好例だと言えます。

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いかがでしたでしょうか??

この記事、「全文公開+投げ銭」スタイルなので
もし「結構面白いじゃん」と思ってもらえたら
チャリーンしてもらえるとウルトラ助かります


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よろしくお願いします!!!!

それでは! 松岡(@iamkisimen)でした!!

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※歌詞参照:楽器ME※



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