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「オウンドメディアでできることとできないこと」~第1回 顧客の行動を理解し、整理する~

マーケティング活動の究極の最終目的は売上を上げることです。

ただ、そこには多様すぎる変数が存在し、「マーケティングがうまくいくと売り上げが上がる」という単純な構図にはなりにくいのが現実です。

複雑な変数を可能な限りコントロールするために、多くのマーケターは顧客の行動を分析し、施策を作り、そして改善を繰り返していることでしょう。

そんなマーケティングの中でも、どの企業も一度は施策として検討、あるいは運用している、したことのある「オウンドメディア」について、意外と見落としがちな「できることとできないこと」を計2回に分けてお話できればと思います。

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真実の瞬間(MOT)で顧客の行動を整理する

これから「オウンドメディアにできることとできないこと」についてお話していくのですが、前提としてBtoC向け商品とBtoB向け商品の2つの違いを「顧客行動」の軸から理解する必要があります。

よって今回は「顧客の行動を理解し、整理する」をテーマにしてお話します。

今、上記にお見せしている図はMOTという概念を軸に顧客の行動を分けたものになります。

訳が分からん!!となってしまうかと思いますが、安心して下さい!
これから丁寧に説明していきます!!

MOTとはマーケティング用語でMoment Of Truth (モーメント オブ トゥルース)の略です。

直訳では「真実の瞬間」となりますが、マーケティングでは
「顧客が商品やサービスのクオリティーを審判する瞬間」
のことを指しています。

またそれぞれが0~3までのステップに分かれており、

ZMOT=Zero Moment Of Truth
FMOT=First Moment Of Truth
SMOT=Secound Moment Of Truth
TMOT=Third Moment Of Truth

という順番で顧客は商品・サービスを評価していきます。

「なんだなんだ???」となってしまいますよね…
自分も初見で理解するのに時間を要しました…

ここからそれぞれのMOTを順番に説明していきましょう!

ZMOT ~ネット上での情報接触~

まず初めに「ZOMT(ジーモット)」について説明していきます。

ZMOTは簡単にまとめると「インターネットでの情報収集のフェーズ」を指しています

MOT(Zero Moment of Truth、ズィーモット)とは「顧客は店舗に来てから買うものを決めるのではなく、来店前にインターネットで情報収集してすでに買うものを決めている」

DSマガジンより引用

ここでポイントになるのは
「インターネットで情報収集してすでに買うものを決めている」
という部分です。

例えば

インターネットである程度洋服のデザインを確認し、目をつけておく

店頭に行ってサイズがあるか、試着しておかしくないか確認する

購入する

というように、皆さんもネットでの情報収集を起点として、商品を購入すること多いのではないでしょうか?

インターネットの情報が発達した昨今、多くの商品はネットでの情報収集時にすでに8割がた意思決定されているといわれています。

実際に私たちもネットで商品を調べている時には、どの商品を購入するかについてある程度目星をつけていますよね!

ネット上に情報があふれかえっている現代だからこそ、ZMOTは重要な指標になるのです

FMOT ~店頭で考える~

次にお話するのがFMOT(エフモット)です。

FMOTを簡単にまとめると「顧客が他社ではなく自社を選ぶ瞬間」になります。詳しい説明は下記です。

エフモット(FMOT)とは、P&G社が提唱した「消費者が購買行動を決める瞬間」に関するメンタルモデルのこと。消費者が商品購入を決める最初の瞬間を指す。

P&G社は「消費者は店頭で目的の商品が並んだ陳列棚を見て、最初の3秒から7秒でどの商品を買うかを決めていることが多い」とし、つまり消費者が店頭で『今この瞬間』に商品を買うかを買わないかを決める瞬間のことを指す。

MACROMILLより引用

つまり、顧客が商品の購買を決定するタイミングということになります。

BtoCの最寄り品であればスーパーやコンビニなどの店舗、BtoBであれば商材によりますが、商談前後の段階にあたります。

ここには配荷率や棚の占有率、どの棚に配置されるかなどのマーケティング部門外の変数が占める割合も大幅に増える傾向があります。

BtoBであれば、顧客の検討軸(導入時に何を一番大切にしたいか)や、各商品の保持している情報によって左右される傾向があります。

BtoBマーケティングではよく言われる「改善は受注に近いところから」というのと同じく、顧客が真に「買うか、買わないか」を決めるタイミングでもあるため、優先的に対策していく必要があります。

SMOT ~商品を使用しているときに評価を行う~

SMOTは「サービスを実際に使用しているときに評価される」という概念です。

より詳しい説明は下記になります。

SMOT(エスモット)とは、「消費者が商品を使用し、その良し悪しを判断・評価し、リピートを決める瞬間」を表す購買メンタルモデルです。

読者の皆さまも、ある商品を使用して「あ、これすごくいいな!また買おう!」と感じて再度購入をしたり、その会社やブランドのファンになったりした経験があるのではないでしょうか。

ASMARQより引用

「消費者がリピートを決める瞬間」ということは、そのサービスを体感した瞬間とも置き換えられます。

つまり、SMOTは製品自体のパフォーマンスが高く、顧客の期待通り、またはそれ以上の体験が提供できることが前提で成り立っている評価ともいえるでしょう。

とにかく顧客が求めている事をいち早くキャッチし、プロダクトやサービスとして提供する必要があります。

TMOT ~体験のたびに経験を上書きする~

最後にTMOTについて説明します。
簡単にまとめると「体験のたびに上書きされるブランドへの愛着度」になります。

詳しい説明は下記になります。

TMOT(ティーモット)とは 、「消費者が商品を繰り返し購入・使用するうちに愛着が芽生え、愛用者として定着する瞬間」を表す購買メンタルモデルです。
「Third Moment of Truth」の略称で、文字通りSMOTの次の段階になります。

ASMARQより引用

牛丼やお菓子、アパレル商品やカフェまで、皆さんもいつもリピートしている商品やお店の1つや2つはあるかと思います。

そういったブランドは、私たちに変わらず満足度の高いサービスを提供し、それに対して私たちは愛着を持っているといえるでしょう。

加えて特に注目するべきなのが「体験のたびに上書きされる」という点です。

車であれば運転をしている瞬間、カフェであれば来店した瞬間、体験が発生するたびその評価は上書きされていきます。

常連のお店だったにも関わらず、たった一回、店員の態度に憤りを感じたためもう行くのをやめた等はよくある例といえるでしょう。

つまり、一度だけ一気に顧客体験を高めたとしても、その後も継続して顧客の期待を超え続けることができなければ、その評価は右肩下がりに落ちていくということを示しているのです。

ここまでMOTについて一つ一つお話をしてきました。

ここからは「BtoC向け商品」と「BtoB向け商品」の2つの軸でそれぞれの顧客行動の特性を基に解説をしていきます。

BtoC向け商品のMOT

まずはBtoC向け商品についてお話します。

またここではBtoC向け商品と表現していますが、牛乳や豆腐、お菓子などの主に最寄り品の事を指しています。

洗濯機や車などの買回り品や専門品はBtoB向け商品の購買行動と近似しているので、そういった商品の顧客行動に興味がある方は、飛ばして「BtoB向け商品のMOT」へ進んでいただけると幸いです!

BtoC向け商品の購買行動は基本的に「直感的」な要素が大部分を占めます。これを専門用語でヒューリスティック処理とも言います。

例えば、牛乳や豆腐を買うときに、前もってネットで情報の収集を頻繁に行ったり、棚の前で5分も10分もどれを購入するか迷う事はありませんよね。

私たちは商品を手に取って、だいたい5秒程度で購入するかしないかを直感的に決めていることが多いとされています。

また購入が直感的に行われるのと同じく、その商品がおいしかったかどうか、買ってよかったどうかという評価も直感的に行われます。

あなたはなんとなく自販機で買ったペットのお茶について、味やコク、ほかの商品との違いなど詳細まで評価し、クチコミとしてSNS投稿するようなことはほとんどしないかと思います。

「なんとなくおいしかった」「思った通りだった」という短く、そして直感的な評価を行うのではないでしょうか?

この顧客の行動を4つの段階で詳細に分解したのが下記の図になります。

特にポイントになるのが、ネットやSNSでの情報接触を担っているZMOTです。

BtoC向け商品の特徴として、基本的に「広告やPRの影響が強く出る」傾向があります。

理由としては、直感的な消費が多いため商材に関する深い理解が必要なく、認知し、興味を持ってもらうことが重要だからです。

またこの部分については第2回のオウンドメディアと絡めてお話します。

※注意
すべてのBtoC向け商品に対して、顧客が直感的に購買を決めているわけではありません。例えば洗濯機や冷蔵庫、掃除機などはBtoC向け商品の考え方よりも、BtoB向け商品の考え方の方が共通点は多いです。


BtoB向け商品のMOT

次にBtoB商材についてお話します。

BtoB向けの商品は、BtoC向けの商品とは真反対で「理性的な購買」が特徴的です。これを専門用語でシステマティック処理といいます。

BtoB向けの商品を購入する際、購買は投資的な意味を持ちます。

会社としての買い物になるので、金額も大きく「その買い物でどれくらい会社の売上向上に貢献できるか?」がベースにある購買判断軸になります

よって、商品のスペックやサポート体制、金額感や過去の事例など、可能な限り情報を収集して購買可否を判断する傾向があるのです。

ここが先ほどお話したBtoC商品との大きな違いです。

BtoB向けの商品も同じく、ネット上での情報収集、いわゆるZMOTでいかに顧客と関係値をつくることができるかがポイントになります。

しかしながら、BtoC向けの商品と大きく違うのが
「覚えてもらうための認知と思い出してもらってからの認知の2つがある」
という点になります。

BtoB向けの商品の購買は、BANTで知られる通り「タイミング」が重要な要素をしめています。

つまり販売者側が「売りたい!」と思ったとしても、その一時点で検討している人はほんの一握りであり、ほとんどの顧客は潜在層になります。

よって一般的なマーケティングの考え方である
「知ってもらい、興味を持ってもらった後に買ってもらえる」
といったシンプルなマーケティングの流れにはなりにくいのが事実です。

BtoB向けの商品のマーケティングでは

「認知し、興味や関心を持ってもらい、憶えてもらう」

「ニーズが顕在化した際に再度思い出してもらい、検討を初めてもらう」

という流れが一般的といえるでしょう。

まとめと次回について

今回、MOTという概念とBtoB、BtoCの商材特性に合わせた解説を行いました。

結論本記事のまとめとしては

  • ZMOT→FMOT→SMOT→TMOTの順で顧客はサービスを評価している

  • BtoC向け商品は比較的「直感的」に購買されるため、ZMOTでは広告やPRが重要になる

  • BtoB向け商品は「理性的」に購買されるため、ZMOTが2段階ある。認知して興味を持ってもらった後に、再度思い出してもらってからのアプローチが必要

  • BtoC向け商品であっても冷蔵庫や洗濯機、車などはBtoB向け商品と購買行動が似ているので、必ずBtoC向け商品の購買行動に置き換える必要はない

といったかたちになります。

次回は、本記事でお話したBtoC、BtoBの顧客行動に基づいて
「オウンドメディアにはどんな事ができて、どんなことができないのか?」
についてお話します!

投稿は来週になるかと思います!
また見に来て下さると幸いですm(__)m


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